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 昭和63年版 犯罪白書 第4編/第3章/第6節/4 

4 まとめ

 多数回前科者の更生には様々な困難が伴い,種々の要因が絡んでいるであろうが,年齢,罪種及び刑名を資料として予後が良好な者の特徴を見ると,まず,第一に注目される点は,10犯以上の多数回前科者といえども,最終刑時からの期間が5年を超えている者が4割以上に達していることであろう。これを調査時の年齢から見ると,年齢が高くなるに従って予後の良好な者が増えていくことが認められた。特に,40歳以後高齢化するとともに再犯は減少している。初犯時の年齢も予後良好率に関連が見られ,初犯時年齢が若い者ほど更生が困難であり,更生するとしても長期間の犯罪生活を送っており,若年犯罪者対策の重要性が示唆される。罪種及び刑名と予後の関連においては,最終犯が風俗事犯,性犯罪である者及び財産刑の前科が多い者の予後と比べて,薬物事犯,凶悪犯及び財産犯である者並びに自由刑の前科が多い者の予後は概して不良であることがうかがわれた。予後の不良な者が多い薬物事犯,凶悪犯及び財産犯については,ほとんどの場合は,自由刑の実刑に処せられるような犯情の悪質な犯罪を反復している者であり,資質・環境上に種々の問題を抱えており,矯正処遇によっても社会復帰が困難な者が多数含まれていると考えられる。