昭和62年に収容鑑別の対象となった少年について，幾つかの側面からその特性を見ると，次のとおりである。
(1)　非行名と年齢層
　III-31表は，非行名と年齢層との関係を見たものである。非行名では，窃盗が37.3%と最も多く，以下，虞犯11.9%，傷害9.7%，道路交通法違反9.6%，毒物及び劇物取締法違反6.8%，恐喝5.2%，覚せい剤取締法違反5.1%などとなっている。
　年齢層別では，年長少年(本節では20歳以上の者を含む。)が45.8%で最も多く，次いモ，中間少年37.5%，年少少年(本節では14歳未満の者を含む。)16.7%の順であるが，男女別に見ると，男子では年長少年と中間少年が，女子では中間少年と年少少年が多くなっている。
　非行名と年齢層との関係を男女別に見ると，男子では，いずれの年齢層においても窃盗が40%前後を占め，次いで，年少少年では虞犯及び傷害が，中間少年では道路交通法違反が，年長少年では道路交通法違反及び傷害がそれぞれ高率である。女子では，年少及び中間少年において虞犯がそれぞれ69.2%と42.1%を占め，年長少年において覚せい剤取締法違反が37.9%を占めているほか，年少少年では窃盗の，中間少年では窃盗，覚せい剤取締法違反並びに毒物及び劇物取締法違反の，年長少年では窃盗及び虞犯の占める各比率がそれぞれ高く，また，年長になるに従って窃盗の比率が少しずつ上昇し，さらに，覚せい剤取締法違反の比率が顕著に上昇している。
(2)　非行時の前歴
　III-32表は，非行名と非行時の前歴との関係を見たものである。非行時に保護処分等が継続していた者は37.8%を占めており，その大部分が保護観察である。また，非行名との関係で見ると，毒物及び劇物取締法違反，覚せい剤取締法違反，恐喝，窃盗及び詐欺を犯した者において，保護処分等を受けていた者の比率が高い。
(3)　非行名と入所回数
　III-33表は，非行名と少年鑑別所入所回数との関係を見たものである。少年鑑別所に初めて入所した者が，68.1%を占めている。非行名と入所回数との関係を見ると，再入者(2回以上の者)の割合が多いのは，薬物関係事犯と財産犯であり，再入者の割合が少ないのは性犯罪である。

III-31表　非行名・年齢層別構成比

III-32表　非行名・非行時の前歴別構成比

III-33表　非行名・入所回数別構成比

(4)　知能及び精神状況
　昭和62年に全国の少年鑑別所に入所した者のうち，知能指数の判明した者(1万9,731人)の内訳を見ると，知能指数59以下は1.7%，60〜69は5.0%，70〜79は18.3%，80〜89は24.2%，90〜99は28.3%，100〜109は15.0%，110〜119は5.5%，120以上は2.1%となっている。
　また，精神診断の結果，精神障害の認められた者は総数の2.2%であり，その内訳は，精神薄弱1.2%，精神病質0.1%，神経症0.1%，その他の精神障害0.8%となっている。
(5)　入所前の問題行動
　昭和62年に全国の少年鑑別所に入所した者につき，入所前の問題行動を男女別に見ると，男子の86.7%，女子の80.5%が喫煙し，男子の46.2％，女子の42.3%が飲酒している。性経験のある者は，男子が72.1%，女子が91.6%，家出歴のある者は，男子が53.9%，女子が86.3%，万引歴のある者は男子が51.1%，女子が60.4%，覚せい剤濫用歴のある者は，男子が6.2%，女子が22.9%，有機溶剤濫用歴のある者は，男子が58.4%，女子が72.3%，自動車等の無免許運転歴のある者は，男子が74.2%，女子が39.3%となっており，飲酒，喫煙及び自動車等の無免許運転歴のある者は男子に多いが，性経験，家出，万引き及び薬物濫用については女子に多い。