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3 精神障害のある犯罪者の特色 昭和58年から62年までの5年間に，検察庁で不起訴処分に付された被疑者のうち精神の障害のため心神喪失又は心神耗弱と認められた者は合計3,520人であり，第一審裁判所で心神喪失を理由として無罪になった者及び心神耗弱を理由として刑を減軽された者は合計458人である。法務総合研究所では，法務省刑事局が精神障害のある犯罪者の実態を知るために調査，収集した上記総計3,978人についての資料を分析し，精神障害のある犯罪者の特色を見ることとした。ただし，累犯については，第4編第2章第2節で取り上げる。なお，本項においては，特に傷害致死を傷害から区別して取り扱う。
(1) 罪名・精神障害名 I-46表は，上記対象者3,978人の犯した罪名と精神障害名との関係を見たものである。総数で見ると，罪名別構成比では，殺人(22.4%)，傷害(14.8%)，放火(13.9%)などが多く，精神障害名別の構成比では，精神分裂病が57.9%と最も高く，以下，アルコール中毒の11.5%，そううつ病の7.7%，覚せい剤中毒の4.6%の順になっている。精神分裂病は，いずれの罪名を見ても構成比が高く，殺人では56.7%，強盗では68.1%，傷害では61.8%，傷害致死では65.8%，強姦・強制猥褻では62.8%などとなっている。 I-45表 精神衛生法による申請・通報件数及び精神障害者数
I-46表 罪名・精神障害名別人員
I-47表は，上記対象者について罪名別及び精神障害名別に不起訴処分理由及び裁判結果を見たものである。検察庁及び裁判所で心神喪失と認められて不起訴又は無罪となった者の合計は2,056人であり，罪名別では，殺人719人，放火414人，傷害267人などで，精神障害名別では，精神分裂病1,404人，アルコール中毒173人，そううつ病157人などとなっている。 (3) 犯行時の治療状況 I-48表は，上記対象者3,978人中，本件犯行時において治療の有無が明らかな者3,695人について，犯行時までの治療状況を見たものである。現に治療中であった者は総数では1,210人(32.7%)であり，残りの2,485人(67.3%)は治療を受けておらず，そのうち1,200人は，犯行前5年間に治療歴がありながら犯行時には治療を受けていなかった者である。犯行時に治療中であった者の比率を罪名別に見ると，殺人で40.2%，強盗で43.0%，傷害致死で52.9%，強姦・強制猥褻で30.8%，放火で27.8%などとなっている。 I-47表 罪名・精神障害名別処分結果
I-48表 罪名別犯行時の治療状況
I-49表は，前記対象者3,978人中入院歴がある者のうち，本件犯行前に退院した2,012人について，直近退院時における病状及び直近退院時から本件犯行までの期間を見たものである。病状不明の者を除くと，直近退院時に未治癒であった者は，総数で1,466人中376人(25.6%)である。同様にして未治癒であった者を罪名別に見ると，殺人では310人中90人(29.0%)，強盗では47人中16人(34.0%)，傷害では227人中51人(22.5%)，傷害致死では22人中6人(27.3%)，強姦・強制猥褻では31人中7人(22.6%)，放火では186人中58人(31.2%)となっている。また，同様の方法で措置入院歴者に限って見ると，殺人では23人中6人(26.1%)，傷害では38人中7人(18.4%)，放火では17人中5人(29.4%)がそれぞれ未治癒となっている。 I-49表 入院歴者の直近退院時の病状及び犯行までの期間
I-50表 罪名・精神障害名別犯行後の治療状況
(5) 犯行後の精神衛生法による取扱い状況 I-50表は，上記対象者3,978人の本件犯行後の治療状況を罪名別及び精神障害名別に見たものである。罪名別に見ると，措置入院となった者は，殺人で572人(64.1%)，強盗で68人(48.2%)，傷害で298人(50.6%)，傷害致死で31人(42.5%)，強姦・強制猥褻で42人(48.8%)，放火で288人(52.0%)などであるが，一方，本件犯行後全く治療を受けていない者が，殺人で23人(2.6%)，傷害で33人(5.6%)，放火で28人(5.1%)に上っている。 I-51表 矯正施設収容中の精神障害者数
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