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 昭和62年版 犯罪白書 第3編/第2章/第4節/2 

2 在院者の特性

 最近3年間における少年院新収容者を短期処遇の二つの区分及び長期処遇の五つの処遇課程(以下「処遇課程等」という。)別にみると,III-33表のとおりである。少年院に新たに収容された人員は,昭和50年以降,増加傾向を示していたが,61年には,前年より282人(4.7%)減少して5,747人となった。これを処遇区分別に見ると,長期処遇は3.7%減の3,841人,一般短期処遇は7.4%減の1,631人,交通短期処遇は1.8%減の275人となっている。なお,総数の男女別では,男子は3.4%減,女子は13.8%減となっている。

III-33表 新収容者の処遇課程等別人員 (昭和59年〜61年)

 III-34表は,新収容者の年齢別人員を処遇区分別に見たものである。昭和61年における各年齢層別の構成比は,18歳以上の少年が前年より1.1ポイント増の43.8%(一般短期処遇38.0%,長期処遇45.6%)であるのに対して,中間少年では0.5ポイント減の39.8%(一般短期処遇43.7%,長期処遇37.7%),年少少年では0.6ポイント減の16.4%(一般短期処遇18.3%,長期処遇16.7%)で,男女別では,おおむね年齢が低いほど女子比が高く,総数に占める長期処遇の比率も,女子(69.6%)の方が男子(66.5%)よりやや高い。

III-34表 新収容者の処遇区分・年齢別人員(昭和59年〜61年)

III-35表 新収容者の処遇区分・非行名別人員  (昭和59年〜61年)

 III-35表は,新収容者の非行名別人員を処遇区分別に見たものである。
 昭和61年の総数を前年のそれと比べると,刑法犯,特別法犯及び虞犯のいずれもが減少している。その中で,増加したものは,詐欺(61.1%増),暴行・凶器準備集合(13.8%増),傷害(13.4%増),毒物及び劇物取締法違反(10.0%増)などであり,減少が目立つものは,公務執行妨害(78.8%減),放火(26.2%減),虞犯(14.9%減),殺人(14.7%減)などである。処遇区分別に見ると,一般短期処遇,長期処遇ともに窃盗が最も多く,それぞれ41.0%,46.7%を占めており,第2位以下は,一般短期では傷害,虞犯,強姦・強制猥裏などの順,長期処遇では,覚せい剤取締法違反,傷害,虞犯などの順となっている。交通短期処遇では,当然のことながら,90.5%が道路交通法違反及び業務上過失致死傷である。なお,女子について見ると,男子に比べ,虞犯の占める比率(29.4%)が高く,また,覚せい剤取締法違反の占める比率(25.4%)が窃盗のそれ(16.8%)を上回っていることが注目されるが,61年においては,覚せい剤取締法違反を犯して新たに収容された女子少年の数は,前年より49人(22.9%)減少した。
 昭和61年の新収容者の教育程度について見ると,高校在学・中退以上の者の占める比率は,交通短期処遇(50.5%)が最も高く,以下,一般短期処遇(37.5%),長期処遇(23.5%)の順になっている。中学在学中の者は,長期処遇11.7%,一般短期処遇13.1%であり,男女別では,女子は,男子の9.8%に比べて,25.0%と高率である。
 III-11図は,新収容者の不良集団への加入歴を処遇区分別に示したものである。暴力組織への加入歴がある者の比率は,長期処遇で15,6%,一般短期処遇で4.5%,交通短期処遇で2.2%となっている。地域不良集団への加入歴がある者の比率は一般短期処遇で最も高く(28.7%),暴走族への加入歴がある者の比率は交通短期処遇で著しく高い(50.2%)。

III-11図 新収容者の処遇区分・不良集団加入歴別構成比(昭和61年)

 III-36表は,法務省矯正局の調査によって明らかにされた,昭和62年3月31日現在の全国少年院在院者4,348人の主な特性について,男女別,年齢層別に見たものである。初発非行年齢について見ると,男子では年少少年の43.8%が12歳未満で既に非行歴を有しているのに対して,女子の年少少年では67.6%が12歳以降になって非行が始まっている。中間少年及び18歳以上の少年の場合も,女子は男子に比べて非行の始まりが遅い。問題行動歴について見ると,男女別では,家出,怠学・登校拒否,有機溶剤濫用,覚せい剤濫用及び万引きについては女子が,対教師暴力については男子が高い比率を示している。また,年齢層別では,家出,家庭内暴力,怠学・登校拒否,対教師暴力及び万引きについては,年少少年が高い比率を示しているが,覚せい剤の濫用については,18歳以上の者の比率が高く,特に,女子の18歳以上では67.1%と著しく高い。家庭環境上の問題について見ると,問題を抱えた少年がかなり多く,特に,女子では,各年齢層で父母間の不和・葛藤及び父母の離婚・別居が,おおむね半数以上を占めている。

III-36表 在院者の主な特性についての男女・年齢層別構成比(昭和62年3月31日現在)