昭和61年に収容鑑別の対象となった少年について，幾つかの側面からその特性を見ると，次のとおりである。

III-29表　鑑別判定と審判決定との関係(昭和61年)

(1)　非行と年齢層
　III-30表は，非行と年齢層との関係を見たものである。
　非行では，窃盗が36.8%と最も多く，以下，虞犯12.0%，傷害9.7%，道路交通法違反9・0%，毒物及び劇物取締法違反6・1%，恐喝5・9%，覚せい剤取締法違反5.6%などとなっている。
　年齢層別では，年長少年(本節では20歳以上の者を含む。)が42.0%で最も多く，次いで，中間少年39.0%，年少少年(本節では14歳未満の者を含む。)19.0%の順であるが，男女別に見ると，男子では年長少年と中間少年が，女子では中間少年と年少少年が多くなっている。
　非行と年齢層との関係を男女別に見ると，男子では，いずれの年齢層においても窃盗が40%前後を占め，次いで，年少少年では虞犯及び傷害が，中間少年では道路交通法違反が，年長少年では傷害及び道路交通法違反がそれぞれ高率である。女子では，年少及び中間少年において虞犯がそれぞれ65.9%と45.9%を占め，年長少年において覚せい剤取締法違反が43.5%を占めているほか，年少少年では窃盗の，中間少年では覚せい剤取締法違反，窃盗及び毒物及び劇物取締法違反の，年長少年では窃盗及び虞犯の占める比率がそれそれ高く，また，年長になるに従って窃盗の比率が少しずつ上昇し，さらに，覚せい剤取締法違反の比率が顕著に上昇している。
(2)　非行時の前歴
　III-31表は，非行と非行時の前歴との関係を見たものである。非行時に保護処分等が継続していた者は38.3%を占めており，その大部分が保護観察である。また，非行との関係で見ると，毒物及び劇物取締法違反，覚せい剤取締法違反，窃盗，業過及び詐欺を犯した者において，保護処分等を受けていた者が多い。
(3)　非行と入所回数
　III-32表は，非行と少年鑑別所入所回数との関係を見たものである。少年鑑別所に初めて入所した者が，69.1%を占めている。非行と入所回数との関係を見ると，再入者(入所2回以上の者)の割合が比較的多いのは，薬物関係事犯であり，再入者の割合が少ないのは性犯罪である。

III-30表　非行名・年齢層別構成比　　　　　(昭和61年)

III-31表　非行名・非行時の前歴別構成比　　(昭和61年)

III-32表　非行名・入所回数別構成比(昭和61年)

(4)　知能及び精神状況
　昭和61年に全国の少年鑑別所に入所した者のうち，知能指数の判明した者(2万391人)の内訳を見ると，知能指数59以下は1.5%，60〜69は4.8%，70〜79は18.7%，80〜89は24.6%，90〜99は28.8%，100〜109は14.6%，110〜119は5.1%，120以上は2.0%となっている。
　また，精神診断の結果，精神障害の認められた者は総数の2.1%であり，その内訳は，精神薄弱1.2%，精神病質0.0%(9人)，神経症0.0%(10人)，その他の精神障害0.8%となっている。
(5)　入所前の問題行動
　昭和61年に全国の少年鑑別所に入所した者につき，入所前における問題行動を，男女別に見ると，性経験のある者は，男子が70.2%，女子が90.4%，家出歴のある者は，男子が53.8%，女子が87.6%，覚せい剤濫用歴のある者は，男子が7.0%，女子が23.7%，有機溶剤濫用歴のある者は，男子が59.6%，女子が71.2%，自動車等の無免許運転歴のある者は，男子が73.8%，女子が36.0%となっており，自動車等の無免許運転歴を除いては，全般的に，女子において入所前に問題行動のある者が多い。