我が国における麻薬取締法，あへん法，大麻取締法の各違反を総合して，その検挙状況について見ると，前掲I-19表に示すとおりである。昭和61年においては，総数で検挙件数2,230件，検挙人員1,852人と，前年に比べて件数で16件(0.7%)増加し，人員で2人(0.1%)減少している。事犯別で特に注目されるのは，大麻取締法違反の動向であって，52年以降1,000人台の検挙人員が続いており，61年では1,337人と，前年に比べて64人(5.0%)増加し，麻薬事犯全体の72.2%を占めている。I-26表は，最近5年間における麻薬等の押収量を示したものである。麻薬等の押収量は，年ごとの増減が著しいが，61年における押収量について見ると，前年に比べてヘロインやLSDが減少し，大麻，コカイン及びあへんが急増している。
　麻薬事犯を，厚生省薬務局及び警察庁保安部の資料によって違反法令別に見ると，次のとおりである。
　麻薬取締法違反については，前述のとおり，昭和20年代から長期間にわたり増減を繰り返してきたが，38年の法改正による罰則の強化等の対策が功を奏し，それ以降激減した。61年は，前年に比べて20人(14.5%)減少して118人となっている。違反態様別構成比では，61年においては，所持，譲渡・譲受，密輸入の各事犯の順に多く，それぞれ34.7%，30.5%，23.7%となっている。使用事犯は各年次とも少なく，61年は7.6%である。密製造事犯は，57年に4人検挙されているが，その後検挙された者はない。また，61年における主な違反品目別の検挙人員は，ヘロイン事犯が49人，コカイン事犯が38人，LSD事犯が16人となっており，コカイン事犯は4人増加しているが，ヘロイン事犯は22人，LSD事犯は8人それぞれ減少している。

I-26表　麻薬等の押収量(昭和57年〜61年)

　あへん法違反の検挙人員は，昭和43年の1,148人を頂点として，その後，急速に減少し，45年以降は100人ないし200人台を上下していたが，58年には408人となり，59年にはいったん減少したものの，60年には再び増加して443人となった。61年には，前年に比べて46人(10.4%)減少して397人となっている。違反態様別に見ると，そのほとんどが，けしの観賞を目的とした栽培事犯であり，61年では96.7%(384人を占めている。
　大麻取締法違反について見ると，検挙人員ば，昭和52年に1,000人を超え，53年以降1,200人を超えているが，61年は，前年より64人(5.0%)増加して1,337人となっている。違反態様別の構成比では，61年においては，所持，譲渡・譲受，密輸入の順に多く，それぞれ58.3%，22.6%，16.5%となっている。