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 昭和61年版 犯罪白書 第3編/第1章/第2節/7 

7 学校と非行

 学校は,少年にとって,家庭と共に最も身近な生活環境であり,しかも近年,高校進学率が90%を超えているなど,少年と学校生活との関係は,一層深まっている。
 III-17表は,最近5年間における交通関係業過を除く少年刑法犯について,中学生,高校生別検挙人員と,その在学生総数に対する比率を見たものである。昭和56年以降における在学生総数は,中学生,高校生共に,おおむね増加傾向を示しているが,検挙人員は,増減を繰り返し,60年では,中学生は検挙人員11万9,736人,高校生のそれは6万2,906人となっている。検挙人員の在学生数1,000人当たりの比率は,60年では,中学生は20.0,高校生は12.5となっている。
 III-18表は,最近5年間における校内暴力事件の検挙状況を見たものである。昭和60年について見ると,検挙件数は1,492件で,前年より191件(11.3%)減少し,また,検挙人員の総数は6,094人で,前年より1,016人(14.3%)減少しており,校内暴力は,徐々に鎮静化する傾向を示している。
 校内暴力事件に代わって,最近,社会の耳目をひくようになったものに「いじめ」の問題がある。

III-6図 家庭内暴力少年の学職別構成比

III-7図 家庭内暴力の対象別構成比

III-17表 少年刑法犯中学生・高校生別検挙人員及びその在学生に対する比率

III-18表 校内暴力事件の検挙状況

 警察庁の調査によると,昭和60年における「いじめ」に起因する事件は638件で,前年に比べ107件(20.2%)増加し,検挙人員も1,950人と前年に比べ30人(1.6%)増加している。これを学校別に見ると,中学生が78.9%と圧倒的に多く,次いで,高校生の16.7%,小学生の4.4%となっている。罪種別状況を見ると,傷害が224件(35.1%)で最も多く,次いで,恐喝165件(25.9%),暴行92件(14.4%),暴力行為66件(10.3%)などの順となっでいる。前年と比べると恐喝が著しく増加しており,いじめの仕返しによる殺人未遂(3件)及び放火(5件)も目立っている。また,いじめの態様について見ると,複数で単独の少年をいじめることが多いが,単独でいじめた事件も185件(31.4%)に上っている。「いじめ」の動機を見ると,相手がいい子ぶる,仲間から離れようとするなどに対する「はらいせ」によるものが最も多く,全体の48.1%を占め,次いで,態度や動作が鈍い,力が弱いなどに対する「おもしろ半分,からかい」が44.8%,転校生などに対する「異和感」が5.3%などとなっているが,いずれも単純なものが多い。いわゆる「いじめっ子」の存在は今に始まったことではないが,ごく普通の少年が罪悪感もなく,日常的に特定の少年を長期間無視したり,いためつけるといった最近の傾向には憂慮すべきものがある。加えて,被害少年の,「いじめ」に対する仕返しとしての事犯や自殺が少なからず見られ始めたという事態には,特に注意を引くものがあり,何らかの対策を迫るものである。この問題については,家庭,学校,警察,児童相談所,司法機関等すべての関係者が,それぞれの立場で,更に真剣に検討を重ねるなど,十分な関心を払う必要があることは今更いうまでもないことであろう。