(1) 保護観察終了時の状況
昭和60年に保護観察を終了した人員の総数は,10万705人であり,このうち,交通短期保護観察少年4万3,228人を除いた5万7,477人について,対象者の種類別に保護観察の終了状況を見ると,II-52表のとおりである。
保護観察処分少年では,解除によって終了した者が69.4%を占め,一方,12.4%の者が,再犯等を理由に新たな処分を受けたことによって,保護処分を取り消されている。満齢又は満期によって終了した者は,17.7%である。少年院仮退院者では,満齢又は満期によって終了した者が60.0%を占め,退院によって終了した者が17.3%,戻し収容及び保護処分取消しによって終了した者の合計が22.0%である。仮出獄者では,期間満了によって終了した者が91.7%と極めて高い。仮出獄取消しによる終了者は7.3%にすぎないが,その内訳は,再犯による仮出獄取消しが1.3%,遵守事項違反による仮出獄取消しが6.0%である。なお,60年には,余罪等による仮出獄取消しはない。保護観察付執行猶予者では,期間満了による終了者が68.5%である。執行猶予取消しによる終了者は29.8%と高い比率を示しているが,その内訳は,再犯による執行猶予取消しが28.1%,余罪等による執行猶予取消しが0.4%,遵守事項違反による執行猶予取消しが1.3%である。
なお,昭和60年では,前年と比べ,対象者のいずれの種類を見ても,保護観察の終了状況に,特に大きな変化は見られないが,仮出獄者の仮出獄取消しによる終了者の比率がやや高くなっている。
(2) 保護観察中の再犯等
昭和60年に保護観察を終了した者のうち,交通短期保護観察少年を除いた者について,保護観察期間中に,再度の犯罪・非行により刑事処分(起訴猶予を含む。)又は保護処分を受けた者の比率(以下本節において「再犯率」という。)を保護観察受理時の罪名・非行名別に見ると,II-53表のとおりである。
II-52表 保護観察の終了状況
II-53表 保護観察終了者の罪名・非行名別再犯率
まず,対象者の種類別に再犯率を見ると,保護観察付執行猶予者の35.4%が最も高く,仮出獄者の2.0%が最も低い。仮出獄者の再犯率が低いのは,保護観察期間が概して短いことによるものとも考えられる。
次に,罪名・非行名と再犯率との関係を対象者の種類別に見ると,保護観察処分少年では,暴行・凶器準備集合の32.4%が最も高く,次いで詐欺の31.0%である。少年院仮退院者では,虞犯の36.9%,詐欺の35.7%,仮出獄者では,強盗の8.3%,強姦の5.5%,保護観察付執行猶予者では,毒物及び劇物取締法違反の74.6%,窃盗の44.4%,覚せい剤取締法違反の43.2%の順となっている。特に,保護観察付執行猶予者における毒物及び劇物取締法違反が,実数は少ないものの,前年同様に70%を超える高い再犯率を示していることが注目される。
II-54表は,最近3年間における対象者の種類別に再犯率を見たものであるが,昭和60年の再犯率は,前年と比較して,仮出獄者を除き,いずれの種類の対象者も低下している。
次に,II-55表は,仮出獄者の保護観察期間中及び同期間経過後における刑務所への再入所状況を,満期釈放者のそれと対比して見たものである。昭和54年から58年までの各年間に仮出獄した者のうち,出所後第3年目までに28.5%ないし30.6%の者が再入所している。これを満期釈放者の出所後第3年目までの再入所率と比較すると,いずれの年においても,仮出獄者の再入所率は,満期釈放者よりもかなり低いことを示している。
II-54表 保護観察終了者の保護観察中における再犯率
II-55表 仮出獄者と満期釈放者の再入所状況