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 昭和61年版 犯罪白書 第2編/第3章/第2節/3 

3 篤志面接委員制度及び宗教教誨

 受刑者の処遇は,人出所時教育,教科教育,クラブ活動,職業訓練など多くの場面で,民間篤志家の協力を得て行われている。ここでは,そのうち篤志面接委員制度及び宗教教誨について説明する。
(1) 篤志面接委員制度
 篤志面接委員制度は,個々の受刑者が抱えている精神的悩みや,家庭,職業,将来の生活設計などの問題について,民間の学識経験者,宗教家,更生保護関係者等の助言・指導を求めて,その解決を図ろうとするもので,昭和28年5月の法務事務次官通達(収容者に対する篤志家の面接指導基準について)に基づいて発足した。以来年々活発となり,処遇に定着して,受刑者の教育や再犯防止のために優れた成果を上げている。
 篤志面接委員は,学識経験者,宗教家及び更生保護関係者等の中から,矯正施設の長が推薦し,矯正管区長が委嘱するものであり,任期は2年で,再委嘱を妨げない。
 昭和60年末現在における篤志面接委員数は,I-32表のとおり,1,107人で,60年における面接回数は,I-33表のとおり,1万1,587回で,委員1人当たりの面接回数は10.5回であり,その面接内容も多岐にわたっている。
 また,篤志面接委員制度のより一層の活発化を図るために,毎年矯正管区単位の研究協議会及び施設単位の協議会が開催され,講演,協議,研究発表,事例研究等を内容とする積極的な研さん活動が続けられている。

II-32表 篤志面接委員数

II-33表 篤志面接相談内容別実施回数

(2) 宗教教誨
 宗教教誨は,信仰を有する者,宗教を求める者及び宗教的関心を有する者の宗教的要求を充足し,宗教的自由を保障するために,民間の篤志宗教家(「教誨師」と呼ばれる。)により実施されている。宗教教誨は,受刑者がその希望する宗教の教義に従って,信仰心を培い,徳性を養うとともに,心情の安定を図り,進んで更生の契機を得ることに役立たせようとするものである。無期その他長期刑の受刑者はもとより,短期刑の受刑者に対しても,優れた成果を上げている。
 教誨師が正式に制度化されたのは,明治14年の監獄則改正のときで,以降日本国憲法制定までの間は,官吏の身分を有する教講師が施設に常駐していたが,現在は民間の篤志宗教家が教誨師として活躍している。ほとんどの教誨師は,施設単位又は都府県単位で教誨師会を組織し,これに加入している。全国組織として,財団法人「全国教講師連盟」があり,ブロック機関としては,各矯正管区単位に地方教誨師連盟がある。
 昭和60年末現在における教講師数は,1,488人で,各宗各派にわたっている。60年中における宗教教誨の実施状況は,II-34表のとおりであり,教誨師1人当たりの教誨回数は9.4回となっている。

II-34表 宗教教誨実施状況