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 昭和60年版 犯罪白書 第1編/第3章/第2節/2 

2 矯  正

 (1) 女子受刑者の処遇
 女子新受刑者の収容状況を見ると,昭和30年以降49年までは減少の傾向にあったが,50年からは増加に転じ,59年には1,298人で,前年に比べて141人(12.2%)の増加となっている。これを罪名別に見ると(II-25表参照),59年では覚せい剤取締法違反が56.0%で,56年以降4年連続して過半数を超えている。
 女子受刑者を収容する施設としては,栃木,和歌山,笠松,麓の各刑務所及び札幌刑務支所の5か所がある。女子受刑者は,その収容施設数が少ないこともあって,施設別の分類収容は行われていないが,施設内における工場,居室の指定等に当たっては,収容分類級が考慮されている。なお,女子外国人受刑者(WF級)は,すべて栃木刑務所に収容されている。
 女子施設における処遇は,情緒の安定性を養うこと,家庭生活に関する知識及び技術を習得させること,保護引受人との関係の維持に努めることなどが,重点事項として行われている。また,開放的な雰囲気で,収容に伴う心理的な圧迫感をできる限り少なくするよう,所内の調度品についても家庭的なものを用意するなどの配慮がなされている。
 女子受刑者に対する職業訓練は,家事サービス,美容,洋裁,和裁等の多種目にわたって実施されている。
 さらに,覚せい剤事犯で入所する者の増加に対応して,薬害防止のための教育も活発に行われている。
 また,女子受刑者の医療及び母子衛生には特別の配慮が払われている。特に,受刑者が妊産婦である場合は,特別の保護的措置が採られていて,出産は外部の病院で行われている。さらに,受刑者が1歳未満の実子を伴う場合にはその乳児を刑務所内の保育室で1歳になるまで育てることも許されている。1歳を超えた乳児は,一般の乳児施設又は保護者のもとに預けられる。
 (2) 少年院女子収容者とその処遇
 女子を収容する少年院は,愛光女子学園,榛名女子学園,交野女子学院,貴船原少女苑,筑紫少女苑,沖縄女子学園,青葉女子学園,紫明文子学院及び丸亀少女の家の9施設であるが,そのほかに,関東医療少年院及び京都医療少年院にも,医療的措置の必要な女子を,男子と別の区画を設けて収容している。
 昭和59年の女子新収容少年は736人で,前年に比べ33人増加している。59年における女子新収容少年の非行名別人員を見ると(III-36表参照),虞犯が29.6%を占め,以下,覚せい剤取締法違反の26.4%,窃盗の17.1%,傷害及び暴行・凶器準備集合の7.6%,毒物及び劇物取締法違反の5.7%となっている。
 これらの女子収容少年に対する処遇は,その特性を考慮し,生活指導においては,規律ある生活習慣の形成,情緒の安定,個別的問題性などに着目して行われている。なかでも,薬物濫用防止教育,性・異性問題に関する教育,親子・家族問題の調整などに重点をおいている。このほか,中学在学中の者には,中学校の課程を履修させるため教科教育課程に編入し,在院中に全課程を修了した者には,中学校の卒業証書を取得させるよう配慮されている。
 職業補導には,家事に関する知識と技能の指導,勤労意欲を高め,職業人としての自覚や自信をもたせるための指導などかあり,院外委嘱職業補導なども活発に行われている。