昭和58年に収容鑑別の対象となった少年について，いくつかの側面から，その特性を見ると次のとおりである。
　(1)非行と年齢層
　IV-29表は，非行と年齢層との関係を見たものである。
　非行では，窃盗が32.9%と最も多く，以下，虞犯13.2%，道路交通法違反10.9%，傷害8.5%，覚せい剤取締法違反7.6%などとなっている。
　年齢層は，年長少年(本節では18歳以上の者をいう。)が44.2%で最も多く，次いで，中間少年35.7%，年少少年(本節では15歳以下の者をいう。)20.1%の順となっているが，年少少年の比率は前年に続いて上昇している。女子のみについて見ると，年長少年は年少少年の約2分の1である。
　非行と年齢層との関係を男女別に見ると，男子では，いずれの年齢層においても窃盗がおよそ3分の1以上を占め，次いで，年少少年では虞犯及び傷害が，中間少年では道路交通法違反が，年長少年では道路交通法違反，覚せい剤取締法違反及び傷害がそれぞれ高率である。
　女子では，虞犯が年少及び中間少年でそれぞれ72.2%，44.8%と高率を占め，覚せい剤取締法違反は年長少年に集中している。また，窃盗は年長になるに従って高率になるが，顕著な差は見られない。

IV-29表　非行名・年齢層別構成比(昭和58年)

IV-30表　非行名・非行時の身上別構成比(昭和58年)

　(2)非行時の身上
　IV-30表は，非行と非行時の身上との関係を見たものである。非行時に保護処分等が継続していた者は36.7%を占めており，その大部分が保護観察である。また，非行との関係で見ると，毒物及び劇物取締法違反と覚せい剤取締法違反において，保護処分等を受けていた者が多いことが注目される。

IV-31表　非行名・入所回数別構成比(昭和58年)

　(3)非行と入所回数
　IV-31表は，非行と少年鑑別所入所回数との関係を見たものである。初めて入所した者が72.4%と大部分を占めている。非行と入所回数との関係を見ると，再入者(2回目以上の者)が多いのは，覚せい剤取締法違反，毒物及び劇物取締法違反並びに財産犯であり，再入者が少ないのは性犯罪及び凶悪犯である。
　(4)知能及び精神状況
　知能を知能指数の判明した者(2万1,146人)について見ると，知能指数59以下は1.0%，60〜69は4.0%，70〜79は20.3%，80〜89は26.2%，90〜99は26.8%，100〜109は15.1%，110〜119は4.9%，120以上は1.8%となっている。
　性格像を，法務省式人格目録(MJPI)の結果からタイプに分けて見ると，まず，男子については，「附和雷同，追従傾向が強く，軽率に行動しやすい」タイプ(IV型)の少年が最も多く，全体の22.6%を占めており，次に多いのが，「気が弱く，過敏で，神経質な」タイプ(I型)の少年で，10.8%を占めている。そして，「自己中心的，むら気で，爆発的・衝動的な行動に走りやすい」タイプ(II型)，「自分の弱点を隠し，表面的に他人とうまく接していこうとする」タイプ(V型)，「偏執的で，疑い深く，ひがみっぽい」タイプ(III型)がそれぞれ6.8%，6.5%，1.8%である。女子では，IV型(19.6%)，I型(13.8%)，II型(8.2%)，V型(4.2%)，III型(1.8%)の順となっている。
　精神診断の結果，精神障害の認められた者は総数の2.3%であり，その内訳は，精神薄弱1.2%，精神病質0.1%，神経症0.1%，その他の精神障害0.9%である。
　(5)入所前の問題行動
　少年鑑別所入所前における問題行動を，男子と女子に分けて見ると，性経験のある者は，男子が71.4%，女子が91.0%，家出歴のある者は，男子が49.2%，女子が86.6%，覚せい剤又は麻薬濫用歴のある者は，男子が10.8%，女子が28.3%，有機溶剤濫用歴のある者は，男子が61.8%，女子が73.0%，自動車の無免許運転歴のある者は，男子が72.2%，女子が30.7%であり，自動車の無免許運転歴を除いては，全般的に，女子に入所前の問題行動のある者が多いことが分かる。また，男子の無免許運転，女子の薬物濫用，無免許運転は逐年徐々に増加している。