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 昭和59年版 犯罪白書 第2編/第3章/第2節/5 

5 みのしろ金目的誘拐等その他の凶悪事犯

 ここでは,以上のほかの凶悪事犯として,みのしろ金目的誘拐,エレベーター利用犯罪及び暴力団による銃器発砲事犯について検討する。
 みのしろ金目的誘拐について,昭和39年のみのしろ金目的誘拐の罪の新設以来の動向を見ると,39年から48年までの10年間の検察庁新規受理人員が48人であったのに対し,49年から58年までの10年間は105人と倍増している。
 みのしろ金目的誘拐の中でも最も悪質かつ凶悪な被拐取者を殺害した事犯の推移を,全国の検察庁から法務省刑事局への報告に基づいて見ると,昭和39年に2件,40年に1件,44年に1件,47年に1件と散発的にしか見られなかったのに,50年代に入ると,53年に2件,54年に1件,55年に4件,56年に1件と4年間連続して発生している。この種事犯は欧米諸国の経験に徴しても自動車,電話等の交通通信手段の発達が犯行を容易にする上,模倣性が強い犯罪であるとされており,ここ一両年の間に最悪の事態を迎えた事案がないとはいえ,今後の成り行きには予断を許さないものがある。
 次に,エレベーターの密室状態を利用した犯罪は,都市化によって必然的に生まれる密室空間に発生するものであり,都市生活者にとって避けることができないこの空間が犯罪の機会を与えているとも言え,この種事犯の近年の多発化は,都市生活者にとって大きな不安と恐怖を与えるものである。
 エレベーター犯罪の最近3年間の認知件数を見たものがII-50表である。これを概観すると,昭和57年が著しく多く,58年は急減したかに見えるが,これは57年に強制猥褻が一時的に急増したことによるものであり,強盗について見ると,56年7件,57年16件,58年16件と増加傾向が窺われ,また,57年には発生を見ていなかった殺人が,58年には1件認知されているなど,決して情勢が好転しているとは言えない。
 最後に,暴力団による銃器発砲事件の発生件数を警察庁刑事局の資料によって見ると,昭和54年以降57年まで69件,94件,116件,125件と増加の一途をたどっている上,58年には230件と急増している。これによる死傷者数も,54年以降48人,63人,45人,48人と推移し,58年は倍増して96人に達しており,また,死者も58年は19人と過去5年間の最高となっている。この種事犯に用いられる銃器は,密輸入をその有力な入手源としており,我が国社会の経済的発展に伴い,ますます人の交流及び物の流通の国際化が進展すると予想され,事態の悪化が懸念される。

II-50表 エレベーター利用犯罪の認知件数(昭和56年〜58年)