昭和58年において警察が認知した我が国の刑法犯の認知件数は，203万9,181件であるが，業過を除く刑法犯は，153万9,782件である。前年に比べて，刑法犯は3万3,889件(1.7%)，業過を除く刑法犯は1万2,136件(0.8%)，それぞれ増加している。
　昭和58年の刑法犯検挙人員は96万3,494人(うち，少年が25万2,553人，構成比26.2%)，業過を除く刑法犯検挙人員は43万7,470人(うち，少年が19万6,727人，構成比45.0%)であり，前年に比べて，刑法犯は1万9,489人(2.1%)増加し，業過を除く刑法犯は3,056人(0.7%)減少している。なお，業過を除く少年刑法犯検挙人員は，前年より4,849人増加している。
　戦後における刑法犯の認知件数及び検挙人員の推移は，I-1表及びI-1図に示すとおりである。業過を除く刑法犯の認知件数について見ると，昭和23年及び24年の約160万件をピークとして，その後，若干の起伏はあるが全体的には減少傾向を続け，48年に約119万件と戦後の最低を記録した後，49年からほぼ一貫して増加し，58年には戦後第3位の約154万件に達している。なお，業過は45年まで，戦後20年以上にわたり増加し，同年に約65万件のピークに達した後，46年から減少傾向に転じ，50年に約44万件まで減少し，その後おおむね43万件ないし44万件台を維持していたが，54年から増勢に転じ，58年には約50万件に達するに至った。この業過を含めた全刑法犯は，50年からほぼ一貫して増加を続け，58年には約203万9,000件に達し，戦後最高の認知件数を記録している。
　業過を除く刑法犯認知件数の人口10万人当たりの比率(以下「犯罪発生率」という。)を見ると，昭和58年には，1,289と42年以降最高の数値になっている。

I-1表　刑法犯の認知件数及び検挙人員(昭和21年〜58年)

I-1図　刑法犯の認知件数及び検挙人員の推移(昭和21年〜58年)

　昭和58年における刑法犯の認知件数，検挙件数，検挙人員及び検挙率を主要罪名別に見ると，I-2表のとおりである。認知件数について主なものを見ると，業過，窃盗，偽造，横領，恐喝，強盗等は前年より増加し，詐欺，傷害，暴行，強姦，贈収賄，放火，殺人等は前年より減少している。なお，58年における全刑法犯の検挙率は，前年の69.4%から70.0%に上昇している。
　I-2図ないしI-5図は，昭和58年の刑法犯及び業過を除く刑法犯の認知件数及び検挙人員の罪名別構成比を示したものである。刑法犯認知件数では，窃盗が65.5%，業過が24.5%を占め，両者を合わせると90.0%に達する。業過を除く刑法犯認知件数では，窃盗が86.7%と圧倒的多数を占め，次いで，詐欺3.9%，横領2.0%，傷害1.5%の順となっている。

I-2表　刑法犯の主要罪名別認知・検挙件数及び検挙人員(昭和58年)

I-2図　刑法犯認知件数の罪名別構成比(昭和58年)

I-3図　業過を除く刑法犯認知件数の罪名別構成比(昭和58年)

I-4図　刑法犯検挙人員の罪名別構成比(昭和58年)

I-5図　業過を除く刑法犯検挙人員の罪名別構成比(昭和58年)

　刑法犯の検挙人員を見ると，業過が54.6%と過半数を占め，窃盗は29.6%にとどまる。これは業過の検挙率が100.0%であるのに対し，窃盗のそれが56.0%と低くなっていることなどが大きく影響している。業過を除く刑法犯検挙人員では，窃盗が第1位であるが，65.2%と認知件数の比率よりもかなり低い比率となっており，以下，傷害の7.4%，横領の7.1%，暴行の4.2%の順となっていて，順位及び比率共に認知件数の場合とはかなりの差異を示している。

I-6図　刑法犯検挙人員の年齢層別構成比(昭和58年)

　次に，昭和58年における交通関係業過を除く刑法犯検挙人員(触法少年は含まない。)の年齢層別構成比を見ると，I-6図のとおりである。
　総数で見ると，昭和48年以降ほぼ上昇傾向にあった犯罪少年の構成比は，最高の45.0%を占め，しかも，少年層のうち，年少少年の構成比は前年より上昇し，少年検挙人員の56.0%を占めるなど，犯罪に関与する者の低年齢化の傾向が依然として認められる。20歳以上25歳未満のいわゆる若年成人は前年と変わらず，また，25歳以上60歳未満の成人の占める比率は前年より若干低下したのに対し，60歳以上の高年齢層の占める比率は，わずかながら上昇している。

I-3表　財産犯の認知件数及び検挙人員(昭和54年〜58年)