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 昭和58年版 犯罪白書 第4編/第2章/第4節/2 

2 在院者の特性

 最近3年間における少年院新収容者の処遇課程等別人員は,IV-39表に示すとおりである。少年院に新たに送致された人員は,昭和50年以降,増加傾向にあり,57年には,前年より249人(5.0%)増加して5,253人である。このうち,一般短期処遇は0.1%増の1,626人,交通短期処遇は15.2%増の242人,長期処遇は6.8%増の3,385人となっている。なお,男女別では,男子の増加が216人(4.8%)であるのに対して,女子の増加は33人(6.2%)である。

IV-39表 新収容者の処遇課程等別人員及び構成比(昭和55年〜57年)

IV-40表 短期処遇及び長期処遇別新収容者の年齢別人員(昭和55年〜57年)

 IV-40表は,新収容者の年齢別人員を短期処遇の区分及び長期処遇別に見たものである。少年非行全般では,年少少年の増加傾向が依然として続いているが,少年院においても新収容者中,年少少年の占める割合は近年上昇傾向にあり,昭和57年では,前年より144人(18.8%)増の17.3%(一般短期処遇19.0%,長期処遇17.8%)である。また,18歳以上の者は45.3%(一般短期処遇42.3%,交通短期処遇62.0%,長期処遇45.6%)である。女子のみについて見ると,年少少年の占める比率は38.1%(一般短期処遇41.4%,長期処遇36.4%),中間少年は39.7%(一般短期処遇39.4%,長期処遇39.9%)であり,18歳以上の者は22.1%(一般短期処遇19.2%,長期処遇23.7%)にすぎない。

IV-41表 短期処遇及び長期処遇別新収容者の非行名別人員(昭和55年〜57年)

 IV-41表は,前表と同様の区分によって新収容者の非行名別人員を見たものである。例年のとおり,窃盗が最も多く41.4%(一般短期処遇36.7%,交通短期処遇5.4%,長期処遇46.3%)となっている。窃盗以外の非行名別構成比を一般短期処遇と長期処遇について比較すると,一般短期処遇で高いのは傷害,強姦・わいせつ,暴力行為等処罰法違反,毒物及び劇物取締法違反,道路交通法違反等で,長期処遇で高いのは殺人,恐喝,放火,覚せい剤取締法違反,虞犯等である。なお,交通短期処遇では,89.7%が業過及び道路交通法違反である。全体として見ると,刑法犯及び虞犯の占める比率が逐年下降しているのに対し,特別法犯のそれが上昇し,57年には22.3%となっている。これは,主に,覚せい剤取締法違反及び道路交通法違反の増加によるものである。また,女子では虞犯が最も多く,全体の31.6%を占めているが,覚せい剤取締法違反が窃盗の22.0%を上回って24.8%を占めていることも注目される。

IV-42表 短期処遇及び長期処遇別新収容者の処分歴別構成比(昭和57年)

 IV-42表は,前表と同様の区分によって新収容者の処分歴別構成比を見たものである。処分歴のある者の占める比率は,交通短期が最も高く約9割であるが,その内訳を見ると,審判不開始・不処分歴と保護観察歴がほとんどである。これに対し,長期処遇には,教護院・養護施設送致及び少年院送致歴のある者の占める比率が高く,特に,4人に1人は過去に少年院送致歴を有している。
 なお,教育歴関係について見ると,高校在学・中退以上の者の占める比率は,交通短期(61.2%),一般短期(45.0%),長期処遇(29.4%)の順に低くなっている。また,中学在学中の者は,長期処遇で13.5%,一般短期で13.6%と全体の1割強を占めている。しかし,女子のみについて見ると,中学在学中の者の占める比率は29.2%で,男子の約3倍となっている。

IV-9図 短期処遇及び長期処遇別新収容者の不良集団加入歴別構成比(昭和57年)

 IV-9図は,前表と同様の区分によって新収容者の不良集団加入歴別構成比を見たものである。反社会的傾向の最も強い暴力組織への加入歴がある者の占める比率は,長期処遇が最も高く,次いで,一般短期,交通短期となっている。長期処遇,一般短期処遇ではその比率が前年より低下しているが,交通短期では前年より上昇している。暴力組織加入歴のある者が,前記のような対象者を収容している交通短期に送致されていることは,他の在院者に与える影響が危ぐされる。また,前年と同様に,暴走族に加入歴のある者の占める比率は,交通短期が最も高く39.3%となっている。
 法務省矯正局が行った調査により,昭和58年4月30日現在の全少年院在院者3,985人の主な特性について,性別,年齢層別に見ると,IV-43表のとおりである。
 初発非行時年齢について見ると,男子では年少少年の69.8%が14歳未満にすでに非行歴を有しているのに対して,女子の年少少年では半数以上(52.1%)が14歳・ 15歳になって非行が始まっている。中間少年,18歳以上の者でも,女子は男子に比べ非行の遅発性が見られる。
 問題行動歴について男女別に見ると,家出,怠学・登校拒否,有機溶剤濫用,覚せい剤濫用では,いずれの年齢層でも女子が高い比率を示し,家庭内暴力,対教師暴力,生徒間暴力などの暴力的非行については,男子が高い比率を示している。次に,年齢層別では,問題行動歴全般について男子,女子ともおおむね年少少年が高い比率を示しているが,覚せい剤濫用経験については,男子,女子とも18歳以上の者が高く,特に,女子の18歳以上では65.4%と著しく高いのが特徴的である。
 家庭環境上の問題について見ると,近時,非行の一般化が言われているが,少年院在院者の家庭環境には,問題のある者が少なくなく,なかでも,ほとんどの問題について男子,女子とも年少少年でその比率の高いことが注目され,家庭環境上の問題が年少少年の非行化に深い関連があることを示唆している。