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 昭和58年版 犯罪白書 第2編/第2章/第2節/2 

2 犯行状況

 II-39表は,共犯の有無を見たものであるが,3罪種とも8割以上が単独犯である。共犯事件の割合は,強盗が最も多く19.9%,次いで,強姦の15.4%,殺人の10.5%となっている。なお,殺人の場合,多数の共犯による事件の多くは,暴力団抗争事案である。

II-39表共犯関係(全国)

II-40表 計画性の有無(全国)

 II-40表は,犯行の計画性の有無を見たものである。計画性のある事犯は,強盗が77.6%と最も高く,次いで,強姦の69.8%,殺人の54.6%となっている。計画性のない殺人が比較的多いのは,突発激情的な事犯が多いためと思われる。
 殺人,強盗の動機及び凶器の事前準備の有無を見ると,II-41表のとおりである。

II-41表 犯行動機及び凶器準備(全国)

 まず,殺人であるが,動機では憤怒が41.7%と最も多く,以下,恨みの15.5%,痴情の11.9%,暴力団抗争の5.4%と続き,凶器準備の有無では,55.0%の事件で凶器の事前準備が認められた。そこで,この動機と凶器準備の有無との相関関係を見ると,暴力団抗争を動機とする事件において,最も凶器の準備率が高く,23件中19件(82.6%)に達し,さらに,恨みが動機となっている事件で凶器の準備された比率が81.8%(66件のうち54件)とこれに次ぎ,確たる事前の動機が背景にある場合に凶器が事前準備されることが多いと言える。次に,凶器の事前準備の有無と犯行場所の相関関係を見ると,路上殺人の場合,88件のうち72件(81.8%)で凶器の事前準備があって最も高率となっているのに対し,犯人宅で敢行された場合は,26.1%(119件のうち31件)の事件においてのみ凶器準備があるにすぎない。後者の場合,偶発性の強い犯行が多いと言えよう。
 次に,強盗であるが,動機では,遊興費欲しさを内容とする事件が全体の31.6%を占めて最も高く,最近の享楽的風潮の世相を反映しているように見受けられる。以下,生活苦を動機とする事件が18.8%,借金返済資金の入手を目的とするものが15.1%と続き,この両者を合わせると33.9%に達する。凶器の準備の有無では,56.1%の事件で事前の準備がなされていた。動機と凶器準備の相関関係を見ると,借金返済資金の入手を目的とする事件の90.3%(72件のうち65件)において凶器の事前準備があり,これに次ぐのが生活苦を動機とする事件における64.4%(90件のうち58件)である。強盗における凶器準備の有無と犯行時間との関係を見ると,午後9時から翌朝午前2時台までの間で凶器準備があるのは42.0%(169件中の71件)であるのに対し,午前9時から午後2時台までの間では,その71.8%(131件のうち94件)で準備があったという注目すべき結果が出ている。凶器の事前準備の有無と犯行場所の関係を見ると,店舗内で敢行された事件の89.1%(101件のうち90件),自動車等の乗物内で敢行された事件の72.5%(40件のうち29件)で同様に準備が認められ,高比率となっている。以上のように,借金返済を目的とする事案,昼間犯される事案及び店舗内で犯される事案に凶器の事前準備のあるものが多くなっているが,これは,主として金融機関強盗によるものである。

II-42表 犯行方法(全国)

II-43表 使用凶器(全国)

 II-42表は,犯行の方法を見たものであるが,殺人では,「刃物で刺す」が最も多く全体の59.0%を占め,以下,「首を絞める」15.9%,「銃器発砲」7.5%の順となっており,強盗では「凶器による脅迫」が40.8%と最も多く,「殴打・足蹴等」の暴行によるものが23.6%とこれに次いでいる。強姦では,「殴打・足蹴等」の暴行によるものが41.6%と最も多く,以下,「凶器による脅迫」が15.2%,「言語のみによる脅迫」が13.4%の順となっている。
 そこで,次に,比較的凶器使用例の多い殺人と強盗について,その使用凶器の有無及び種別を見ると,II-43表のとおりである。この両罪種において最も多く使用された凶器は,刀剣類以外の刃物である包丁・ナイフで,殺人で54.8%,強盗で41.4%を占め,凶器使用なしがこれに次いでそれぞれ12.6%,37.2%を占め,銃器使用例はそれぞれ8.2%,3.6%である。