IV-75表は,ドイツ連邦共和国における1971年から1980年までの10年間の薬物犯罪に関する検挙人員の推移を見たものである。検挙人員の総数は,1973年以後一貫して増加し,1980年には,1971年の約2.4倍の5万5,447人に達している。年齢層別に検挙人員の動向を見ると,成人層は,一貫して増加し,その増加傾向も著しく,1980年には,1971年の約4.9倍に達している。青年層も1973年以後増加し,1980年には,1971年の約1.7倍になっている。少年層は,1976年まで減少し,以後やや増加傾向にあり,1980年の検挙人員は,前年より約1,000人増加している。構成比で見ると,1972年までは,青年層の占める比率が高かったが,1973年以降,成人層の占める比率が高くなり,1980年には,成人層が全検挙者の63.5%を占めている。1977年から1980年までの間の検挙人員に占める女子の割合は,20%前後である。1979年及び1980年の両年における,総検挙人員に占める外国人の割合は,両年とも,15%余りであるが,薬物犯罪のうち,密売・密輸に係る事犯の検挙人員中に占める外国人の割合は23.1%及び24.4%に達し,この種事犯と外国人との関係の深さがうかがえる。ちなみに,1980年に押収されたヘロイン267kgのうち,95.6%は中近東から密輸入されたもので,このうちの220kg(86.3%)は,外国人によりドイツ連邦共和国に持ち込まれたものである。
IV-75表 年齢層別薬物事犯検挙人員ドイツ連邦共和国(1971年〜80年)
1980年における麻薬法第11条第1項,第3項及び第4項に違反した嫌疑で裁判所で終局判決を受けた人員は,1万7,118人で,そのうち,有罪判決を受けた人員は,1万4,786人(少年裁判所法の適用を受けた有罪者数4,826人を含む。)で,有罪率は,86.4%である。少年裁判所法の適用を受けた有罪者を除く9,960人のうち,68.3%に当たる6,804人が自由刑の言渡しを受けており,交通犯を除く刑法犯有罪者総数のうち,自由刑の言渡しを受けた者の比率が26.8%であるのに比較して極めて高い。また,保護観察のための刑の執行猶予を宣告された割合を見ても,麻薬法違反では54.4%(刑法犯総数では61.5%)で,麻薬法違反に対する刑の量刑の厳しいことがうかがえる。