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7 不服申立制度 収容されている者からの苦情の発生は,拘禁環境下では,その処遇がいかに適正に行われていても,不可避であると言える。申し立てられた苦情を法令に基づき適切かつ迅速に処理することは,行刑施設の運営上重要な事項の一つである。
現行の苦情処理制度としては,法務大臣又は巡閲官(法務大臣の命を受けて行刑施設に対する実地監査を行う法務省の職員)に対する情願があるほか,行刑施設の長に対する面接(所長面接)がある。情願は,受刑者が施設の処置に対して不服があるときに行うもので,大臣に対しては書面で,巡閲官に対しては,書面又は口頭で行われるが,いずれも申し出の内容が,事前に施設の職員に知得されないよう秘密の申し出が保障されている。情願の法的性格は,請願の一種とされ,申し出に対する回答の義務はないものと解されているが,行刑の実際においては,申立事項について十分な調査を行い,申立人に対し結果を通知するなど誠実な処理がなされている。 III-56表 収容者の不服申立件数(昭和45年,53年〜55年) また,所長面接も,代理者による実施を含め,活発に運用されている。更に,受刑者からの不服申立制度には,民事・行政訴訟,告訴・告発,人権侵犯申告等の一般的制度がある。 III-56表は,昭和45年及び53年以降におけるこれらの不服申立件数を見たものである。近年,各種の不服申立てが増加しているが,このことは,受刑者の人権意識の増大,不服申立てへの直さいな手続の保障等の結果によるものと解することができよう。しかし,例えば,54年及び55年について,告訴・告発の件数を見ると,55年は707件で,54年の359件に比べて1.97倍となっているが,申立人の実数は,149人で,10件以上の申立てをした者が6名で,1人で322件もの告訴・告発を行った者が含まれている。拘禁という特殊な環境下における不服申立てのすべてが,真に人権が不当に侵害されたり,あるいは真に犯罪があると思料して行われたものであるかは疑問である。III-4図は,55年中の情願を除く不服申立てを事項別に見たものである。不服申立ての多い事項は,職員関係,衛生・医療,保安・懲罰の順となっている。 III-4図 事項別不服申立件数(昭和55年) |