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この白書は,昭和55年を中心とした最近の犯罪動向と犯罪者処遇の実情を概説したものである。
我が国の犯罪情勢は,欧米諸国と比べると,犯罪発生率及び犯罪増加率の双方とも著しく低く,比較的安定しているように見られるが,少年非行については,少年の検挙(補導)人員の増加率及び少年比はいずれも著しく高く,既に欧米諸国並み,又はこれを超えるに至っており,また,金融機関強盗の激増,通り魔的な殺人事件等の多発及び覚せい剤濫用を主とする薬物犯罪の激増など,犯罪対策の上で種々の問題を抱えているように見受けられる。 このような犯罪情勢にかんがみ,本白書は,これまでに公的統計資料の入手できた欧米4箇国の少年非行の動向及び少年司法運用の実情を概観し,併せて,必要な範囲でこれらの国の少年司法制度の特色を紹介するとともに,これと対比しつつ我が国の激増する少年非行の要因と背景及び防止対策についても言及した。また,金融機関強盗については,当研究所が被害金融機関,検察庁及び矯正施設の協力を得て実施した総合的な実態調査の結果得られた資料を中心とし,欧米諸国の公的研究・統計資料を参照しつつ,事犯の内容,犯人像の特質及び判決結果などの実態と,それによって示唆される対策を明らかにするように努めた。 終わりに,この白書を作成するに当たり,法務省各部局はもとより,最高裁判所事務総局,警察庁,欧米諸国政府等から協力と援助を受けたことに改めて謝意を表するとともに,この白書に関する責任は,専ら当研究所にあることを明らかにしておきたい。 昭和56年10月 早 川 晴 雄 法務総合研究所長 |