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この白書は,昭和54年を中心とした最近の犯罪動向と犯罪者処遇の実情を概説するとともに,我が国及び欧米諸国の大都市における犯罪の現況を中心として国際比較を試み,更に,主として矯正・保護の分野における犯罪者処遇について戦後の推移を概観した。
我が国の犯罪情勢は,金融機関強盗の多発,覚せい剤濫用を主とする薬物犯罪の激増,少年非行の増加傾向など,警戒を要する面もないではないが,全体的に見ればほぼ平穏に推移しており,欧米諸国と対比してみても,犯罪の発生率も低くおおむね良好な状態にあるように見受けられる。本白書では,犯罪動向の指標的な意義をもつ都市犯罪について,欧米諸国の7大都市と我が国の3大都市を対象として国際比較を行い,また,金融機関強盗及び薬物犯罪についても,国際的視野から分析を加えているが,その結果も前記の結論を裏付けている。 施設内処遇と社会内処遇の問題は,刑事政策上の主要なテーマであるが,昭和54年が少年法及び犯罪者予防更生法施行30年に当たるので,この機会に,犯罪者処遇の現状の理解に資するため,戦後30年にわたる我が国における犯罪者処遇の変遷のあとを回顧してその概要をとりまとめた。また,我が国の犯罪者処遇を考える上において,欧米諸国における犯罪者処遇の実情を知ることは意義があると思われるので,公的統計資料に基づいてその概要を紹介した。 終わりに,この白書を作成するに当たり,法務省各部局はもとより,最高裁判所事務総局,警察庁,欧米諸国政府等から協力と援助を受けたことに改めて謝意を表するとともに,この白書に関する責任は,専ら当研究所にあることを明らかにしておきたい。 昭和55年10月 吉 良 慎 平 法務総合研究所長 |