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 昭和54年版 犯罪白書 第3編/第2章/第2節/4 

4 収容少年の特質

  (1)知能及び精神状況
 昭和53年における家庭裁判所関係鑑別終了者のうち,知能指数の判明している1万5,711人の知能段階別構成比は,知能指数59以下の1.0%,60〜69の3.1%,70〜79の9.7%,80〜89の24.7%,90〜99の31.6%,100〜109の22.3%,110〜119の6.5%,120以上の1.2%である。79以下の低知能段階の構成比について,年次別に推移を見ると,30年は32.2%,40年は25.4%,50年は15.4%,53年は13.8%と次第に減少してきている。
 次に,上記対象のうち,精神状況の判明している1万5,346人の精神診断別構成比は,精神障害なしの96.4%,精神薄弱の1.9%,精神病質の0.4%,神経症の0.1%,その他の精神障害の1.1%,診断困難の0.1%である。精神障害なしの構成比について,年次別に推移を見ると,昭和30年は75.4%,40年は87.7%,50年は95.4%,53年は96.4%と次第に増加してきている。
  (2)年齢と非行名
 収容少年の年齢層別の構成比は,III-50表によれば,16歳未満の年少少年が14.3%,16・17歳の中間少年が35.7%,18歳以上の年長少年が50.0%である。
 非行名については,窃盗が36.3%を占め最も多く,次いで虞犯の14.2%,傷害の6.6%,毒物及び劇物取締法違反の6.1%,恐喝の5.3%,道路交通法違反の5.2%等となっている。
 年齢と非行名との関係を男女別に検討すると,男子では,窃盗(自動車以外)のほか,年少少年の虞犯,中間少年の自動車窃盗と毒物及び劇物取締法違反,年長少年の傷害,強姦・わいせつ,覚せい剤取締法違反,道路交通法違反などの比率が高い。女子では,年少及び中間少年の虞犯,年長少年の窃盗,覚せい剤取締法違反,売春防止法違反などの比率が高い。
  (3)学職別の問題行動歴
 収容少年の学職別構成比は,III-51表によれば,学生・生徒の占める比率は15.5%,有職少年は44.6%,無職少年は39.9%である。これは,第1章第2節で示した警察段階での検挙人員のそれぞれの割合,73.7%,16.2%,10.2%と著しく異なり,学生・生徒の少年鑑別所への収容は,検挙人員に比べて非常に少なくなっている。
 次に,同表により,問題行動歴の合計を内容別に見ると,性経験ありか72.1%,家出の数度内と常習が55.8%,麻薬・覚せい剤使用の数度内と常用が10.7%,有機溶剤使用の数度内と常用が54.6%,無免許運転の数度内と常習が55.6%であり,収容少年に問題行動歴を持つ者が多いことを示している。

III-50表 少年鑑別所収容少年の非行名別・年齢層別構成比(昭和53年)

III-51表 少年鑑別所収容少年の学職別問題行動歴の構成比(昭和53年)

 男女別の比較では,性経験,家出,麻薬・覚せい剤は女子に,無免許運転は男子に,それぞれ高い比率を示している。また,学生・生徒の問題行動歴として,女子の性経験ありの84.5%,家出常習の47.6%,有機溶剤常用の20.0%,男子の有機溶剤常用の19.8%,無免許運転常習の11.9%などが比較的目立っている。
  (4)観護経過
 III-52表は,収容少年の観護経過を示す。入所から出所まで,一貫して良好な生活態度を示す少年は,5割強に過ぎず,動揺型・下降型・不良平担型が3割に近い。特に,女子は男子に比べて,動揺型や不良平担型が多く,収容中の観護処遇に,よりきめ細かな配慮を要することが示されている。

III-52表 少年鑑別所収容少年の観護経過の構成比(昭和53年)