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 昭和53年版 犯罪白書 第2編/第3章/第2節/2 

2 保護観察の実施

(1) 更生への援助活動
 保護観察の実施は,保護観察官及び保護司によって行われるが,その実施に当たっては,対象者本人に更生上の問題点を自覚させ,自らこれを解決させるよう,面接による処遇に重点が置かれる場合が多い。特に,保護司はその地域性を生かして,保護観察に付されている者にひんぱんに面接を行っている。保護観察官も,また,保護観察所又はその支部若しくは駐在官事務所に対象者を来訪させ,又は任意の来訪を受けるなどして面接を行い,更に随時,対象者又はその保護者等を訪問して面接し,他方,保護観察を担当する保護司を訪れ,処遇についての協議を遂げている。保護観察官は,このほか,定期的に一定の場所に駐在して面接する等の援助活動をも行っている。この定期駐在による面接状況を見ると,II-80表のとおりであって,昭和52年では,保護観察に付されている者2万2,245人,その者の家族又は雇用主等の関係者6,967人,保護司1万9,076人との間に面接による処遇や協議が行われている。

II-80表定期駐在実施状況(昭和52年)

 保護観察では,保護観察官又は保護司による対象者等との面接を中心とする指導監督・補導援護を行うほか,本人が病気又は失職等により緊急な事態にある場合に援助の措置を執っている。これには,食事や衣料の給与等の一時保護のほか,更生保護会の保護施設に収容して宿泊等の便宜を与えるなどの継続保護の措置がある。昭和52年におけるこれらの保護措置の実施状況は,II-81表及びII-82表のとおりである。一時保護では,1,446人に措置を行っており,衣料の給与に次いで,食事の給与,旅費の支給,医療の援助の順となっている。継続保護では,6,418人に措置を行っており,食事付宿泊の供与が多い。保護観察の種類別では,仮出獄者が極めて多く,一時保護で54.6%,継続保護で83.3%を占めている。なお,総数を前年と比べると,一時保護では149人,継続保護では12人増加している。

II-81表 保護観察対象者に対する一時保護の措置別人員(昭和51年,52年)

II-82表 保護観察対象者に対する継続保護の措置別人員(昭和51年,52年)

(2) 成績良好者に対する措置
 保護観察において行状が安定し,更生意欲が強く,再犯のおそれもないと認められる者に対しては,保護観察の期間中であっても,保護観察を中止し,又は終了する措置(以下「良好措置」という。)が執られることがある。
 保護観察処分少年については,保護観察を一時中止する良好停止又は保護観察を終了する解除の措置があり,少年院仮退院者については,仮退院期間を短縮して終了する退院があり,仮出獄者については,不定期刑に処せられている者について仮出獄期間を短縮して終了する不定期刑の終了があり,保護観察付執行猶予者については,保護観察を仮に解除する仮解除がある。なお,刑事処分を受けた者についての恩赦があるが,これについては本章第5節で述べる。
 II-83表は,昭和52年における良好措置を受けた人員を見たものである(良好停止は,中間的処分であるので除いている。)。保護観察処分少年で解除を受けた者は2万3,517人,少年院仮退院者で退院の措置を受けた者が211人,仮出獄者で不定期刑の終了を受けた者は10人,保護観察付執行猶予者で仮解除を受けた者が1,418人であって,前年に比べていずれも増加している。特に解除については1万460人も増加しているが,これは交通短期保護観察の少年の増加によるものである。

II-83表 成績良好者に対する措置(昭和51年,52年)

(3) 成績不良者に対する措置
 保護観察に付されている者が,指導監督に服さず,更生意欲に欠け,行状が不安定であるような場合には,保護観察所に呼び出して事情を聴取する等の措置を執り,また,一定の住居に居住しない場合,遵守事項に違反した疑いがあって呼出に応じない等の場合には,引致を行い,更に,一定の期間所定の施設に留置する等の措置が執られる。昭和52年には,172人が引致され,また,104人が留置されている。
 また,保護観察に付されている者が,保護観察の期間中守るべき遵守事項に違反する等の事由のある場合には,少年院仮退院者についての戻し収容,仮出獄者についての保護観察の停止又は仮出獄の取消し,保護観察付執行猶予者についての執行猶予の取消し等の措置(以下「不良措置」という。)が執られることがある。昭和52年において,戻し収容により少年院に再収容された者,保護観察の停止を受けた者,仮出獄の取消しによって刑務所に再収容された者,執行猶予の取消しによって刑務所に収容された者の人員は,II-84表のとおりである。前年に比べて,執行猶予の取消しを除いて一般に減少している。

II-84表 成績不良者に対する措置(昭和51年,52年)

 更に,保護観察中に犯罪・非行を行い,これによって処分を受ける者がある。昭和52年に保護観察が終了した者について,保護観察中の犯罪・非行により処分を受けた者の状況を見ると,II-85表のとおりである。処分を受けたことのある者の総数は8,700人で,保護観察終了総人員の17.3%に当たる。保護観察の種別ごとの割合では,保護観察処分少年が17.1%,少年院仮退院者が29.2%,仮出獄者が6.0%,保護観察付執行猶予者が37.2%となっている。総数で前年に比べて682人増加している。保護観察付執行猶予者では処分の76.5%が懲役又は・禁錮で占められ,また,仮出獄者では保護観察期間が短い者が多いために処分率が6.0%と低いことが特徴的である。
 なお,不良の状態にあるものとみなされるものに,所在不明がある。昭和52年末現在において所在不明となっている者の,人員は,II-86表のとおりである。保護観察の種別ごとの比率では,仮出獄者が19.7%で最も高く,他は保護観察付執行猶予者の8.1%,少年院仮退院者の7.1%,保護観察処分少年の2.5%と低く,全体では6.0%であって,51年末に比べて所在不明率はわずかに減少している。仮出獄者の所在不明率が高いのは,仮出獄者が所在不明になると保護観察が停止されて刑期の進行が止まり,時効が完成するまで保護観察が終了しないため,所在不明者数が累積されていくためである。

II-85表 保護観察中の犯罪・非行により処分された者の状況(昭和51年,52年)

II-86表 保護観察対象者の所在不明率(昭和51年・52年12月31日現在)