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 昭和51年版 犯罪白書 第2編/第5章/第2節/2 

2 犯罪傾向の進んだ受刑者の処遇

(1) YB級受刑者の特性と処遇との関連

 一般に,矯正処遇は,受刑者各人の特性に応じた個別的処遇計画に基づいて実施されている。この意味で,犯罪傾向の進んだ若年成人受刑者に対して効果的な処遇を行うためには,受刑者の諸特性と処遇との関連を理解する必要があろう。
 前述のような調査結果に基づいて,まず,人格的側面と処遇との関連を見ると,YB級受刑者中,知能の高い者は概して処遇に順応しやすいが,準普通域(知能指数80〜89)以下の知能段階にある者には軽微な規律違反を犯す者が多く,処遇経過は必ずしも良好ではない。
 環境的側面と処遇との関連においては,YB級受刑者のうち,家族との折り合いのよい者は処遇に適応しやすいが,家族関係が不良な者は,不安定な処遇経過を示している。
 犯罪性と処遇との関連を見ると,初発犯罪年齢が低く,かつ,前処分の多い者は,処遇には順応しやすいのに対し,初発犯罪年齢が高く,かつ,前処分の少ない者は,規律違反行為が多く,不安定な処遇経過をたどっている。なお,暴力組織加入者は,一般に,独善的・威圧的に振る舞うなど,処遇経過は円滑を欠くが,体育,レクリエーションなど一部の処遇場面には意欲的な参加態度が見られる。
 次に,意識態度と処遇との関連を見ると,不平・不満が多く,要求がましい意識態度の強い者は,日常生活場面での小反則が多く,経過はあまりよくない。また,見通しが暗く,将来を悲観的にとらえている者は,多様な処遇場面を無気力に受け止め,規則違反を繰り返す傾向がある。

(2) 犯罪傾向の進んだ受刑者の処遇方法

 以上のようなYB級受刑者に関する検討結果から,その特性に応じた処遇方法として指摘できるのは,次のような事項である。
 [1]人格の領域において,性格の偏りは大きいものの,知的水準は決して低くはないので,知的能力の開発と人格の変化・変容を意図する処遇技術を導入することによって,改善更生を志向させる。[2]環境的側面においては,家族との折り合いがよく,家族と融和している者は処遇経過も良好であるので,環境の調整等によって家族関係を改善する。[3]犯罪性の領域において,初発犯罪年齢が低く,施設収容歴の多い者は,処遇に表面的には順応するが,これは施設慣れとも見られるので,真の問題点のは握に努め,分類処遇を推進する。また,暴力組織に加入し,犯罪的傾向の進度が著しい者であっても,一部の処遇場面には意欲的であるので,彼らのニードをは握しながら,有効な処遇場面を整備,拡充する。[4]意識態度の領域においては,現実の処遇を否定的に受け止め,将来に対する見通しの暗い者が少なくないので,処遇プログラムへの参加意欲を喚起するよう動機づけを行い,また,資格を取得させ,技能を習得させる等,将来への希望を持たせることに重点を置いた処遇を実施する。
 これらの処遇方法は,現に各施設において実施されているところでもある。しかも,このようなYB級受刑者の特性に応じた処遇方法は,YB級受刑者のみに対する処遇にとどまるものではない。これを足掛りとして,すべての犯罪傾向の進んだ受刑者に対する処遇方法を更に開発し,推進していかなければならない。