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1 鑑別状況 昭和48年における少年鑑別所の鑑別受付人員は,III-65表に示すとおり,男子3万7,144人,女子1万1,621人,計4万8,765人である。このうち家庭裁判所関係では収容鑑別が1万2,449人(25.5%),在宅鑑別が8,177人(16.8%)その他が8人で,計2万634人(42.3%)である。法務省各機関からの依頼による鑑別は計3,535人(7.2%),一般からの依頼による鑑別は2万4,596人(50.4%)となっている。
III-65表 少年鑑別所の受付状況(昭和46年〜48年) これらの鑑別人員は前年に引き続き減少している。このような傾向は,III-66表にみるとおり,在宅鑑別の中で多数を占める交通事犯関係の鑑別が減少していることのほか,低年齢少年の場合には詳細な鑑別手続がとられないまま事件が処理されがちであることに起因するように思われる。しかし,少年の交通事犯はなお少なからず発生しており,再犯防止の見地からは鑑別を要するケースも多いと考えられ,また,少年が年少者であっても,非行の発見された早期に的確な鑑別を行い,適切な処遇をすることが重要であるから,少年鑑別所の機能のいっそうの活用を図る必要がある。III-66表 交通事犯少年鑑別実施人員(昭和46年〜48年) 在宅鑑別は,家庭裁判所が身柄在宅のまま調査中の少年について,少年鑑別所に鑑別の請求をした場合に行うものであって,少年の出頭している場所,例えば家庭裁判所等に鑑別技官が出向いて,テストや面接を行っているものであるが,これは,収容に伴う家庭からの隔離あるいは職業や学業の中断などの事態を避けながら,非行に関連する資質的な問題点を専門的技術に基づいて解明するもので,できる限り多数のケースについて適用されることが望まれる。一般鑑別は,一般の家庭や学校その他の団体からの依頼に応じて,少年鑑別所の外来鑑別室若しくは適当な場所において鑑別を行うもので,少年鑑別所が各地域における非行問題に関する科学技術センターとしての機能を果たそうとするものでもある。 少年非行のより詳細・精密な検討・分析のためには,少年を少年鑑別所に収容し,より多面的なテストや面接並びに計画的,組織的な行動観察を行い,更に,処遇経過に応じた少年の変化なども考慮し,多数の関係専門職員の協議を行うことが必要である。この収容鑑別の一般的な経過は,III-9図のとおりである。 III-9図 少年鑑別所における鑑別の経過(収容鑑別) このようにして,鑑別は,少年の資質上・環境上の問題点,その問題点と非行との関連,非行から社会適応へ導く処遇指針などを明らかにするものであり,関係諸機関や一般社会により貢献するよう少年鑑別所の設備・陣容の整備が進められている。鑑別人員の全般的減少傾向にかかわらず,矯正及び保護関係の鑑別が増加している。これは,少年鑑別所が少年院在院者や保護観察対象者に対して,その処遇経過に応じ処遇指針を勧告し,より緊密に処遇に参加する態勢を進めていることをうかがわせるものといえよう。 昭和48年中に家庭裁判所関係の鑑別を終了した者の知能指数段階別人員と最近3年間のその構成比の推移を示したのが,III-67表である。IQ79以下の減少とIQ90以上の増加の傾向は,それほど顕著ではないものの,依然として続いている。 III-67表 知能指数段階別人員の構成比(昭和46年〜48年) 同じ家庭裁判所関係の鑑別終了者の精神状況診断結果は,III-68表のとおりであって,構成比からいえば,精神薄弱が昨年の4.1%から3.6%へ,精神病質が1.7%から1.0%へとわずかながら低下している。III-68表 精神診断別人員の構成比(昭和46年〜48年) 次のIII-69表,III-70表及びIII-71表は,非行の種類と年齢層,知能指数及び精神状況との関係を示したものである。これによると,まず,15歳以下の年少少年の場合には窃盗(51.9%)や虞犯(16.6%)が多く,18歳以上の年長少年の場合には,暴行・傷害・恐喝・脅迫(15.1%)や業務上過失致死傷(12.5%),道路交通法違反(19.3%)などが多くなっており,16歳・17歳の中間少年は両者の間に位置することが認められる。III-69表 家庭裁判所関係男子鑑別終了者の非行の種類と年齢層(昭和48年) III-70表 家庭裁判所関係男子鑑別終了者の非行の種類と知能指数段階(昭和48年) III-71表 家庭裁判所関係男子鑑別終了者の非行の種類と精神診断状況(昭和48年) 次に,知能をIQ79以下,80から99まで及び100以上の3段階に分け,この知能段階と非行との関係をみると,窃盗は,知能段階の低い者に多く(45.6%),高い者ほど少なくなり(34.7%),業務上過失致死傷,道路交通法違反は,逆に知能段階の低い者に少なく(4.1%,10.6%),高い者に多い(8.1%,18,9%)という傾向がみられる。この傾向は,年齢の高低の場合と対応するようであるが,暴行・傷害・脅迫・恐喝のいわゆる粗暴犯については,知能段階の低い者にも高い者にも共通して多くなっている。精神状況と非行との関連は,正常と診断される者の非行は道路交通法違反や業務上過失致死傷に集中し(50.5%,18.6%),暴行・傷害・脅迫・恐喝がこれに次いでいる(9.8%)。精神薄弱と診断される者に特徴的なのは窃盗で(55.8%),強姦・わいせつがこれに次いでいる(10.1%)。精神病質者の非行は,その病質の種類によって態様が異なり,一概にはいえないが,この表によって,構成比の上からいうならば,窃盗が第1位であり(46.2%),次が暴行・傷害・脅迫・恐喝(13.8%)となっている。 III-72表は,家庭裁判所関係鑑別終了者のうち,審判決定のあった人員に対する鑑別判定別人員を示したものであり,例年とほぼ同様に7,843人(約60%)が在宅保護と判定されている。少年院や教護院・養護施設等への収容保護が適当と判定されたものは3,404人(約26%),そのうち,少年院に収容が適当と判定されたものは3,248人である。この少年院収容の判定のうち,初等少年院及び医療少年院への収容意見並びに教護院・養護施設への収容意見が,女子について特に高率であるのが注目される。 III-72表 鑑別判定別人員の構成比(昭和46年〜48年) III-73表は,同じ鑑別終了者中審判決定のあった人員に対する審判決定別人員を示したものである。これによると,保護観察が3,724人(約29%)で最も多く,少年院送致の2,226人(約17%),不処分・審判不開始の1,359人(約10%),検察官送致の705人(約5%)などとなっている。その他,試験観察等により終局決定未了のものが,4,688人(約36%)いる。ここでも,女子の初等少年院,医療少年院並びに教護院・養護施設への収容の決定が男子よりも高率になっている。III-73表 審判決定別人員の構成比(昭和46年〜48年) |