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2 少年検察 少年検察の対象となるのは,前記のとおり,原則的には禁錮以上の刑にあたる罪を犯した少年の事件である。
ところで,全国の検察庁が,昭和四四年中に新たに受理した少年事件の被疑者総数(検察庁間の移送,家庭裁判所からの送致および再起を除いた受理人員数,以下,本節において「新規受理人員」という。)は,六五二,四一〇人(前年より二,九三〇人減)である。その内訳をみると,刑法犯(準刑法犯を含む。以下,本項において同じ。)が,総数の二九・九%にあたる一九五,一〇五人,道交違反(自動車の保管場所の確保等に関する法律違反を含む。以下,本項において同じ。)が,総数の六八・五%にあたる四四六,八二九人,道交違反を除く特別法犯が,総数の一・六%にあたる一〇,四七六人となっている(検察統計年報資料による。)。 まず,道交違反を除く新規受理人員について,主要罪名別の人員数とその百分比を,前年と対比して示すと,III-51表のとおりである。これによると,刑法犯については,前年まで最も多かった窃盗が,過失傷害に初めて首位を譲ったことが注目される。窃盗に次いで,受理人員の多い罪名は,前年と同じく,傷害,恐喝,暴力行為等処罰に関する法律違反の順となっている。前年より大幅に増加しているのが過失傷害であり,放火も増加している。放火の増加は,過激集団の火炎びんなどによる放火事犯の多発に起因するものであろう。その他の主要罪名については,強盗致死傷等および賍物が,わずかに増加したほかは,すべて前年より減少している。次に,道交違反を除く特別法犯の新規受理人員の中では,銃砲刀剣類所持等取締法違反が最も多く,総数の二六・六%を占めている。 III-51表 少年被疑事件の新規受理人員(昭和43,44年) III-52表は,昭和四四年の少年新規受理人員総数について,年齢層別に,その比率をみたものである。一八,九歳の年長少年が最も多く,総数の五五・八%を占めている。III-52表 少年被疑事件の年齢層別新規受理人員(昭和44年) 検察官は,少年の被疑事件について,捜査を行ない,犯罪の嫌疑があり,または,嫌疑がなくても,家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料する場合には,原則として,その事件を家庭裁判所に送致しなければならないものとされている。昭和四四年中における検察庁の少年被疑事件処理状況をみると,既済総数は七三三,七六九人であり,検察庁間の移送を除くと,六四八,〇二二人で,そのうち家庭裁判所送致は,九九・六%にあたる六四五,三四七人である。そのほかは,年齢超過後の処分が一,八一〇人,不起訴・中止が八六五人となっている(検察統計年報資料による。)。少年事件を家庭裁判所に送致するにあたって,検察官は,少年の処遇に関して意見を付けることができるが,昭和四四年中の家庭裁判所終局決定人員に対する検察官の処遇意見を,その意見別に,刑法犯,特別法犯,道交違反に分けてみると,III-53表のとおりである。これによると,総数の二九・六%が刑事処分相当,二・四%が少年院送致相当,一一・六%が保護観察相当で,五六・三%がその他の処分相当となっている。刑事処分を相当とする意見を付したものの割合が最も多いのは道交違反で,刑法犯がこれに次ぎ,一方,少年院送致処分および保護観察処分を相当とする意見を付したものの割合では,前者は刑法犯,後者は特別法犯が最も多くなっている。ところで,検察官の取り扱う少年事件には,右のほかに,家庭裁判所から刑事処分が相当であるとして,または,年齢超過のため,いわゆる逆送されたものがある。この逆送を受けなければ,検察官は,少年事件について公訴を提起できないし,また,逆送を受けた事件は,年齢超過による場合を除き,原則として公訴を提起しなければならない(少年法第四五条第五号)。III-54表は,家庭裁判所から逆送された事件について,昭和四四年中における検察庁の処理状況をみたものである。処理総数一五一,二六八人のうち,道交違反が一〇七,二九八人で,総数の七〇・九%を占め,刑法犯は二九・〇%,特別法犯は〇・一%となっている。次に,起訴された者の内訳をみると,起訴総数六六,一三五人のうち,七一・二%にあたる四七,〇九一人が道交違反によって占められ,これに次ぐ刑法犯は,総数の二八・七%の一八,九六六人であるが,そのうちの九〇・六%にあたる一七,一八〇人までが過失傷害である。また,起訴総数の九六・四%が,略式命令または即決裁判請求であり,公判請求は三・六%にすぎない。公判請求率の最も高いのは,特別法犯の三二・一%で,刑法犯は一二・三%,道交違反は,わずか〇・一%にとどまっている。公判請求人員総数二,四一〇人(前年より四七四人減)のうち,その九六・九%を占める刑法犯二,三三六人を,主要罪名別にみると,過失傷害の七五六人が最も多く,次いで,窃盗の五八九人で,以下,強制わいせつ,強姦・同致死傷三二四人,傷害一六九人,恐喝一〇四人の順となっている。 III-53表 罪種別検察官処遇意見の比率(昭和44年) III-54表 検察庁における少年被疑事件の処理状況(既済)(昭和44年) |