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3 起訴後の勾留と保釈 裁判所は,被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で,被告人が定まった住居を有しないとき,罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき,あるいは,逃亡し,または逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるときは,これを勾留することができる。
起訴後の勾留期間は,公訴提起の日から二か月間であるが,とくに継続の必要がある場合は,一か月ごとに更新することができる。しかし,特定の場合(必要的保釈除外事由にあたる場合)以外は,更新は一回に限られている。 最近五年間の,各年末現在における,勾留中の被告人の数とその勾留期間とを比率で示すと,II-25表のとおりである。これによると,昭和四四年末現在の勾留被告人の総人員は,九,二五八人で,このうち勾留期間が二か月以内の者は五九・四%である。これに三か月以内の者を加えると,七一・五%となり,残り二八・五%の者が,三か月をこえる勾留を受けたことになるが,このうち,一年をこえる者が四・六%となっている。 II-25表 年末現在勾留中の者の勾留期間別人員と比率(昭和40〜44年) 次に,勾留されている被告人は,保釈によって,一定の条件の下に釈放される。保釈には,保釈の請求があったとき,必ず保釈を許可しなければならないもの(必要的保釈または権利保釈という。)と,必要的保釈には該当しないが,裁判所が適当と認めた場合に保釈を許す裁量保釈などがある。昭和三九年から四三年までの五年間に,通常第一審で終局した被告人のうち,起訴時に勾留中であった者および第一審終局までに保釈によって釈放された者などの状況をみると,II-26表のとおりである。これによると,起訴時に勾留中であった者の割合は,六五・四%ないし七〇・〇%であり,このうち三四・二%ないし三八・八%が,保釈によって釈放されている。保釈されるためには,保釈保証金を納付しなければならないが,この保証金額は,犯罪の性質および情状,証拠の証明力ならびに被告人の性格および資産を考慮して,被告人の出頭を保証するに足りるように裁判所が決める。 II-26表 通常第一審終局被告人の保釈状況(昭和39〜43年) II-27表は,昭和三九年から四三年までの五年間に通常第一審で終局した被告人について,保釈保証金の金額別分布をみたものである。これによると,昭和四三年で最も多いのは,一〇万円以上五〇万円未満で,総数の五九・九%を占めており,次いで,五万円以上一〇万円未満の二九・四%となっている。同表の示すとおり,保釈保証金は,逐年低額のものが減少し,高額のものが増加している。II-27表 保釈保証金額別比率(昭和39〜43年) なお,保釈中に逃亡するものがあって,これが公判審理の長期化の理由の一つとなっている。II-28表は,昭和四三年末現在で,全国の高裁,地裁,簡裁において,それぞれ訴訟係属二年をこえる者を,長期係属人員として,そのうち,被告人の逃亡等によって長期化した事件をみたものであるが,長期係属総人員六,二五八人中,被告人逃亡,所在不明等を理由とするものが,三八・九%にあたる二,四三七人にのぼり,その半数近くの一,一一五人が,保釈中逃亡して所在不明となっていることは,保釈の運用上,注目を要するところである。II-28表 逃亡・所在不明・疾病・心神喪失を理由とする長期係属人員(昭和43年) |