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 昭和35年版 犯罪白書 第四編/第二章/一/5 

5 試験観察

 家庭裁判所では,保護処分などの終局決定にさきだち,保護処分の蓋然性のある事件について,相当の期間,家庭裁判所調査官の観察に付し,補導措置を講じつつ,その反応をみて少年本人の個性と環境の実相を見きわめようとすることがある。これが試験観察の制度である。したがって,それは,前述の調査および診断の段階で行なわれる調査の一形式または一部分である。
 この試験観察は,どの程度に行なわれているであろうか。IV-35表によれば,試験観察は,家庭裁判所新受人員の三パーセント前後にあたり,年間約一万二,三千人について行なわれている。

IV-35表 家庭裁判所の試験観察決定人員と率

 試験観察に付する旨の決定があってから,家庭裁判所による終局決定がされるまでの期間とその間における試験観察の内容とを昭和三三年についてみると,IV-36表のとおりである。まず,試験観察の種類では,身柄付補導委託が二,一九九人で,総数の二五パーセントに達し,遵守事項付の試験観察は,一,八七九人で二一パーセントに達している。つぎに,観察期間でみると,もっとも多いのは,四ヵ月以内のものである。そして,一年以内に終局決定のされたものは,総数の約九四パーセントであるが,他面,一年をこえるものも六〇七人におよんでいるのが注目される。このように,一年以上の長期にわたってそのような内容の試験観察を実施することが,保護観察類似の実態をもつところから,制度の本来の目的を逸脱するのではないかが問題となろう。

IV-36表 終局決定のあったものの試験観察の期間・種類別人員(昭和33年)

 さて,試験観察が行なわれたのちの終局決定の区分を昭和三三年につき図示すると,IV-12図のようになる。まず,保護処分に付された者は終局決定総数のうち三七・一パーセント,検察官送致は一・七パーセントである。保護処分のうち,少年院送致は終局決定総数の一五・三パーセント,保護観察に付された者は二一・八パーセント,不開始,不処分およびその他が六一・二パーセントをしめている。

IV-12図 試験観察後の終局気分別人員の百分率(昭和33年)