前の項目 次の項目 目次 図表目次 年版選択 | |
|
5 その他の刑法犯 その他の刑法犯のうちで一般社会におよぼす影響の大きい犯罪としては,とく職と放火があり,数的に比較的多いものとしては,とばくがある。
放火の昭和三一年以降の検挙人員はI-8表の示すとおり,二七年より低い水準にあり,三六年まで一進一退で,ほぼ横ばい状態にある。発生件数の動きもほぼこれと同じである。放火には,保険金詐取を目的とする利欲犯たる性貿を有するもの,報復,感情上の衝突等に基因するもの,めいていその他から1なるおもしろ半分に犯すもの等,種種の性質のものがある。そして放火は多くの犯罪の中で,最も捜査のむずかしいものの一つであって,その統計には暗数が多く,犯罪の実相を明らかにすることはきわめて困難である。放火のうち保険金詐取を目的とするものは,不況時に増加する傾向があり,最近はこの種のものが増加する傾向は認められない。その他の原因の放火については,なお詳細な検討が必要である。 次にとばくは,I-8表の示すとおり,昭和三一年以降は二七年に比較してはるかに低い水準にあり,昭和三四年までわずかずつ減少しているが,その後は横ばいの状態にある。発生件数もほぼこれと同じ動きを示している。とばくは戦後統計面において激減した特色のある刑法犯である。戦後は,戦前にが国になかったパチンコ,競輪などの多くの公認されたとばく類似の娯楽ができたので,戦前と比較すればとばくは減少したものと思われる。しかし統計にあらわれているほど,激減したとは考えられない。とばくは暴力団関係の犯情の重いものから,通常の勝負事に関連して行なわれる軽微な性質のものまで多種多様であって,捜査が困難なため,その統計には暗数が多い。そして好況期には増加する性質があり,他方最近も強力なぼく徒の暴力団が多数活動しているので,潜在している事件は,犯情の重い事件と軽微な事件を通じて,相当多数あるものと考えられる。 次にとく職については,本編第三章二の公務員犯罪の項の説明にゆずることとする。 その他の刑法犯としては,通貨偽造,文書偽造その他の偽造犯罪,堕胎,遺棄,誘かい等の犯罪があるが,数的にはきわめて少なく,犯罪現象全体からは重要性は少ないので,本年度の白書においては説明を省略することとする。 |