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 昭和42年版 犯罪白書 第二編/第二章/二/2 

2 処遇の概要

 婦人補導院における処遇は,さきに述べたような入院者に対して,医療処置,職業補導および生活指導の三つを,対象別・時期別に,適宜組み合わせて,各個人の特性に応じた分類処遇を実施している。生活指導は,院内生活のすべてを通じて行なわれるが,各種の教育的行事により,徳性と情操の向上を図っている。
 職業補導は,家事,園芸,洋裁,和裁,手芸等のほか,施設の自営用務である炊事,清掃および洗たくなどにつかせている。職業の補導を受けた者に対しては,職業補導賞与金が与えられているが,その額は,平均一人あたり,月額六〇〇円程度で,退院までの間に,三,〇〇〇円から四,〇〇〇円の額になる者が最も多いようである。なおこのほかに,院外委嘱職業補導という,施設外の事業所等で,住み込みまたは通勤で補導を受ける制度もある。院外補導では,ラジオ部品組立て,織物整理などがそのおもなものである。さらにまた,課業終了後の余暇時間には,自己の収支において行なう,造花やビーズドル入れの製作,毛糸編みなどの自己労作も認められている。これらの処遇は,単に,婦人補導院の職員ばかりでなく,民間の篤志面接委員その他,地域社会の強力な援助を得て実施されている。
 補導成績の良好な者は,地方更生保護委員会の決定により,仮退院が許されるが,その人員は,少ないうえに,逐年減少し,昭和三七年の仮退院者は,四一人であったが,三八年では二六人,三九年では一〇人,四〇年では四人と急激に減少の一途をたどり,昭和四一年では,六人となっている。このように,大部分の者が,六月の補導期間満了による退院であり,したがって,十分な補導効果が上がらないまま退院する者も少なくなく,入院時の疾患が未治ゆのまま退院する者は,性病で四六・二%,その他の疾患では,六〇・五%にのぼっている。
 II-102表は,最近五年間の再入院者について,前回出院時から再犯までの期間を調べたものであるが,これによると,六月未満の者と六月以上の者との占める比率が,昭和三九年を境として逆転し,六月未満の再犯率が五〇%を割り,しだいに減少する傾向を示してはいるが,なお,相当数の者が六月以内に売春行為を始めていることは,看過しえない点である。売春防止法が施行されて一〇年を経過したが,補導処分の効果を十分に発揮するためには,婦人補導院における処遇にも考慮すべき点があり,さらに一そうの改善と工夫の必要なことはもちろんであるが,むしろ,それにも増して重要なことは,退院後の補導や援護であり,関係各機関のいっそう緊密な協力のもとに,より強力な更生のための施策を打ち出す必要があるといえよう。

II-102表 再入院者の再犯期間別人員(昭和37〜41年)