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 昭和42年版 犯罪白書  

はしがき

 昭和四二年版犯罪白書の特色は,昭和四一年の数字を大幅に取り入れたことである。創刊当時のこの白書は,おおむね,二年前までの数字に基づいて記述されていたが,昭和三九年版以来,前年の数字をも加えるよう努力が続けられてきた。しかし,前年の数字についての犯罪関係の統計書は,早いものでも,八月以降でなければ発行されず,司法統計については,さらに,一年近く遅れている。したがって,正規の統計書による確定した数字を基礎とし,かつ,全体を通じて同じ年の数字について考察しようとする限り,前々年の数字によらざるをえないわけである。しかるに,一方,白書が,広く国民一般に,その分野の現況を伝えようとするものであることを考えるなら,少なくとも,前年の数字を示す必要があると思われる。そこで,本年の白書においては,法務省の司法法制調査部をはじめとする各部局ならびに最高裁判所事務総局および警察庁刑事局の協力を得て,できる限り,新しい数字を取り入れることとした。本書に示されている昭和四一年の数字は,速報や統計書の資料などに基づくものであり,あるいは,最終的な統計書に示される数字と多少の差異が生ずることも考えられる。この点については,明年以後の白書において補正される場合もありうることを承知されたい。また,右に述べたような次第で,細かい事項別の数字については,昭和四一年のものが得られないため,四〇年の数字についての考察にとどまる部分もかなりあり,両年の数字についての説明が入り交っている箇所もあることをあらかじめお断わりしておきたい。なお全体を通じて,昭和四〇年の数字をもなるべく掲げるようにしたので,相互の比較検討は,それについてなされたい。
 つぎに,本書においては,一般の理解に便ならしめるため,グラフを多くするように努め,また,制度,手続等や専門用語についても,できる限り,説明を加えることとした。また,後に述べるとおり,重点事項についても,相当の紙幅をさいた。一方,従来からの白書に継続して掲げられている数表やその説明は,継続して読まれる場合の便宜のため,なるべくこれを存置することとした。そのため,いきおい,本書は,従来の版に例を見ないほどの紙数を費やすこととなった。
 さて,本書は,例年のとおり,全体を,犯罪の概観,犯罪者の処遇および少年犯罪の三編に分け,わが国の犯罪状況の推移と昭和四一年を中心とする各犯罪の概観を行ない,特殊な犯罪および犯罪者ならびに注目すべき犯罪について説明を加えたほか,検察・裁判・矯正・仮釈放および更生保護の現況を紹介した。本書は,副題を「最近の犯罪と犯罪者処遇の諸問題」としたが,とくに重点をおいたのは,犯罪としては,最近とくに問題とされている少年犯罪,交通犯罪,公務員犯罪および精神障害者の犯罪であり,また,検察については起訴猶予,裁判については刑の量定である。また,矯正においては,刑務所,少年院および少年鑑別所の処遇または鑑別をめぐる諸問題と新しい動向を,保護については,保護観察をめぐる問題点とその対策等を採り上げた。もっとも,公務員犯罪および精神障害者の犯罪については,その動向を明らかにする統計資料が乏しいため,十分な考察ができず,また,矯正および保護の問題についても,その全体にわたっては掘り下げた解明を行なうことができなかった。
 おわりに,本書をつくるにあたって,法務省各部局はもとより,最高裁判所事務総局および警察庁から協力と援助を受けたことを感謝し,あわせて,本書の内容に関する責任は,もっぱら,当研究所にあることを明らかにしておきたい。
昭和四二年八月
長戸 寛美 法務総合研究所長