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 昭和41年版 犯罪白書 第三編/第一章/一/4 

4 特別法犯少年の推移

 特別法犯検挙人員の最近一〇年間の推移を,少年および成人別に対比すると,III-12表のとおりである。

III-12表 少年・成人別特別法犯検挙人員の推移(昭和31〜40年)

 昭和三一年における少年特別法犯検挙人員は三一八,〇三二人であり,少年人口一,〇〇〇人に対する割合(人口比)は二九・五であった。その後,昭和三七年まで,少年特別法犯は急激に増加し,同年における人口比は七一・五であり,昭和三一年に比較すると,実に二・四倍の増加を示した。その後は,多少の変動はみられるがごくわずかずつ減少傾向に転じている。しかし,昭和四〇年の実人員は八二二,五三二人であり,人口比は六三・二となっていて,昭和三一年に比較すれば約二倍に増加している。
 少年特別法犯検挙人員を成人のそれと比較すると,昭和三一年における成人特別法犯検挙人員は二,〇二九,五六九人であり,成人人口一,〇〇〇人に対する割合(人口比)は三九・〇である。成人特別法犯検挙人員もまた少年の場合と同様の動きを示しており,昭和四〇年には特別法犯検挙人員は四,五九二,六二三人,人口比は七三・四となっている。成人の場合についての増加割合は,昭和三一年に比較すると一・九倍である。これでみると,特別法犯においては,少年検挙人員の人口比は,成人のそれよりも少ないが,増加の勢いは,やはり少年の方が大きい。
 ただし,少年特別法犯検挙人員のうち,その大多数は,道交違反によるものであって,この点では,少年と成人との間にほとんど差異はない。すなわち,昭和四〇年における少年の特別法犯検挙人員八二二,五三二人のうち,道交違反によるものは八〇三,八四六人であり,これは全体の九七・七%である。同年における成人特別法犯検挙人員は四,五九二,六二三人であり,このうち,道交違反によるものは四,四三九,三二〇人であって,これは全体の九六・七%である。また,この特別法犯検挙人員中道交違反によるものの割合は,少年,成人ともに最近数年間ほとんど一定している。ちなみに,昭和四〇年の道交違反少年の数は,成人を含めた同年中の全道交違反者の一五・三%にあたり,また,刑法犯を含めた同年中の全犯罪少年の七九・三%にあたる。成人の場合と同様に,少年についても,道交違反は,その量だけからいっても注意すべき問題といえよう。
 以下,少年の道交違反事件について,その違反の態様からみて注目すべき二,三の特徴点を指摘しよう。
 第一の点は,少年の道交違反には,原動機付自転車などの操縦に伴うものが多いということである。III-13表は,昭和四〇年の車両種類別検挙件数を示しているが,最も多いものは,原動機付自転車の四四七,一八九件であって,全体の五三・三%を占めている。ついで,普通貨物自動車一二・六%,軽三輪または軽四輪貨物自動車一一・六%,自動二輪車または軽二輪車一〇・一%などの順となっている。普通自家用乗用車,大型貸物自動車,三輪貨物自動車などはきわめて少ない。これを成人の構成比率と比較すると,少年が高い割合を示しているのは原動機付自転車であって,ついで自動二輪車,軽二輪車などである。これに対して,成人の割合が高い車両種別は,普通貨物自動車,普通自動車などである。思うに,このような事実は,運転免許を取得しうる年令が車両種別に異なることによるものであろう。それはそれとして,多数の少年が,手軽な原動機付自転車などによって,交通法規違反を犯していることは,単に交通安全の見地からだけではなく,少年非行防止という見地からも注目すべきである。

III-13表 道交違反少年車両種類別検挙件数(昭和40年)

 第二の点は,少年の道交違反には,無免許運転やスピード違反が多いといらことである。III-14表により違反種別をみると,少年に最も多い違反は,無免許運転二二〇,六八九件,ついで,スピード違反一八三,九三〇件であって,この二種の違反行為が全体の半数近くを占めている。これを成人の違反種別と比較すると,少年の割合が高いものは無免許運転であって,全体の二六・三%である。このほか,免許証不捷帯,乗車制限違反なども少年にやや高い。これに対して,成人の割合が高いものは,スピード違反,駐車禁止違反,一時停止違反などである。しかし,少年の場合も,スピード違反が全体の二一・九%とかなり高い割合であることをみのがすわけにはいかない。

III-14表 道交違反少年違反種別検挙件数(昭和40年)

 第三の点は,少年の道交違反事件は,もちろん人口の稠密な地方に多発してはいるが,その他,たとえば,東北および四国地方のような比較的人口の稀薄な地方にも増勢がみられるということである。III-15表により,少年道交違反送致件数を地域別にみると,最も多いのは,関東地方(東京を除く。),近畿地方であっていずれも二三・三%である。中部,九州および東京の三地域は,各一〇%強である。東京,関東および近畿の人口稠密地域の送致件数を合計すると,全体の五七・三%をも占めていることがまず注意される。しかし,これを同表により前年比でみると,東京および近畿地方では,むしろ減少しており,関東地方(東京を除く。),東北地方,四国地方などの増勢が顕著である。これは,今後の問題として留意すべき現象であると思う。

III-15表 道交違反少年地域別送致件数(昭和40年)