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令和2年版 犯罪白書 第7編/第5章/第2節/1

第2節 矯正
1 刑事施設

刑事施設における薬物依存離脱指導第2編第4章第3節3項(2)参照)は,平成18年度から,特別改善指導の一つとして,全国の刑事施設に共通の標準プログラムを用いて実施されている。24年度からは,パイロット施設において薬物依存回復プログラムを試行し,その結果等を踏まえ,刑の一部執行猶予制度が開始された28年度から,それまで1種類であった標準プログラムを必修プログラム,専門プログラム及び選択プログラムの3種類に複線化して整備し,指導を行っている。刑事施設における薬物依存離脱指導の概要は,7-5-2-1図のとおりである。

7-5-2-1図 刑事施設における薬物依存離脱指導の概要
7-5-2-1図 刑事施設における薬物依存離脱指導の概要

必修プログラムは,麻薬,覚醒剤その他の薬物に対する依存があると認められる者全員に対して,2又は3単元(1単元60分から90分),期間は1か月から3か月を標準として実施し,DVD教材及びワークブックによる課題学習に取り組ませることを通じて,薬物依存からの回復の段階における特徴的な心身の状況,薬物を使用していた行動・生活パターンに戻ってしまう兆候に気付き,対処する必要性及び社会内で断薬を継続するための支援を行っている専門機関・民間自助団体について理解を深めさせるなどして,薬物の再使用に至らないための対処方法について具体的にまとめさせるものである。専門プログラムは,より専門的・体系的な指導を受講させる必要性が高いと認められる者に対して,12単元(1単元60分から90分),期間は3か月から6か月を標準として,グループワークを通じて,他の受講者の発言を聞くことで新たな気付きを得る機会を提供するなどして,必修プログラムと同様の内容について指導するものである。選択プログラムは,必修プログラム又は専門プログラムに加えて補完的な指導を受講させる必要性が高いと認められる者に対して,グループワーク,民間自助団体によるミーティング,講義,視聴覚教材視聴,課題学習,討議,個別面接等の方法により,おおむね専門プログラムの内容に準じて各刑事施設で定めた項目及び内容について指導するものであり,各刑事施設の実情,対象者の資質及び指導の効果等を考慮して,指導時間数,頻度及び期間を設定することとされている。

対象者の選定は,面接調査やアセスメントツールを活用し,薬物への依存の程度や再犯のリスク等の問題性を把握して行われ,指導は,刑事施設の職員(法務教官,法務技官及び刑務官),処遇カウンセラー(認知行動療法等の技法に通じた臨床心理士等)及び民間協力者(薬物依存からの回復を目指す民間自助団体,医療関係者,警察関係者等)が協働して当たる。

薬物依存離脱指導の受講開始人員の推移(平成18年度以降)は,7-5-2-2図のとおりである。28年度以降,受講開始人員は1万人前後で推移している。令和元年度におけるプログラムごとの受講開始人員(重複計上による。)は,必修プログラム5,125人,専門プログラム1,471人,選択プログラム1,723人であった(法務省矯正局の資料による。)。

7-5-2-2図 薬物依存離脱指導の受講開始人員の推移
7-5-2-2図 薬物依存離脱指導の受講開始人員の推移
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