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令和2年版 犯罪白書 第7編/第3章/第8節/2

2 合意制度

「証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度」(以下この項において「合意制度」という。)は,平成28年法律第54号による刑事訴訟法の改正により,刑事手続における証拠の収集方法の適正化及び多様化等を図るために創設された(平成30年6月施行)。合意制度は,検察官が,弁護人の同意がある場合に,被疑者・被告人との間で,被疑者・被告人が他人の刑事事件について真実の供述をすること,証拠物を提出することなどの協力行為をし,検察官が被疑者・被告人の事件について,その協力行為を被疑者・被告人に有利に考慮して公訴を提起せず,軽い訴因により公訴を提起し,軽い求刑をするなどの有利な取扱いをすることを内容とする合意をすることができるものである。

合意制度の対象となる犯罪には,覚醒剤取締法,大麻取締法,麻薬取締法,あへん法及び麻薬特例法の各違反の罪が含まれている(ただし,死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる犯罪については,合意制度の対象から除かれていることから,法定刑に無期の懲役刑がある営利目的の覚醒剤輸入,営利目的のジアセチルモルヒネ等の輸入,業として行う不法輸入等の罪については,その対象とならない。)。

薬物犯罪は,一般に犯罪組織が関与する密行性の高い犯罪類型であり,多数人が関与することや複数の者の間の禁制品の流通を伴うことなどから,合意制度は,首謀者の関与状況等を含めた事案の解明のために,犯罪の実行者等の組織内部の者から供述や証拠物を得て捜査を進展させる上で,有用な捜査手法となり得る。