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令和2年版 犯罪白書 第5編/第2章/第4節/2

2 保護観察対象者の再処分等の状況

平成12年から令和元年までの間に保護観察が終了した仮釈放者(全部実刑者)及び保護観察付全部執行猶予者について,<1>再処分率(保護観察期間中に再犯により刑事処分(起訴猶予の処分を含む。刑事裁判については,その期間中に確定したものに限る。)を受けた者の占める比率をいう。),<2>取消率(再犯又は遵守事項違反により仮釈放又は保護観察付全部執行猶予が取り消された者の占める比率をいう。)及び<3>取消・再処分率(取消又は再処分のいずれかに該当する者(双方に該当する場合は,1人として計上される。)の占める比率をいう。以下同じ。)の推移を見ると,5-2-4-2図のとおりである。

5-2-4-2図 保護観察終了者の再処分率・取消率等の推移
5-2-4-2図 保護観察終了者の再処分率・取消率等の推移
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取消率は,仮釈放者(全部実刑者)については,平成20年以降4%台で推移していたが,令和元年は3.9%であり,保護観察付全部執行猶予者については,近年25%前後で推移し,元年は21.1%であった。なお,仮釈放者の再処分率が極めて低いのは,仮釈放者が再犯に及んで刑事裁判を受けることになった場合であっても,仮釈放期間中には刑事裁判が確定しないことが多いことなどが関係していると考えられる。

令和元年に保護観察が終了した仮釈放者(一部執行猶予者)1,148人のうち,仮釈放を取り消された者は25人であり,同年に保護観察が終了した保護観察付一部執行猶予者412人のうち,刑の一部執行猶予が取り消された者は212人であった(CD-ROM参照)。

仮釈放者(全部実刑者)及び保護観察付全部執行猶予者の取消・再処分率の推移を,男女別・年齢層別・罪名別・就労状況別に見ると,5-2-4-3図のとおりである(仮釈放者(一部執行猶予者)及び保護観察付一部執行猶予者についてはCD-ROM,罪名別を除き覚醒剤取締法違反については7-4-3-13図をそれぞれ参照)。

5-2-4-3図 保護観察終了者の取消・再処分率の推移(男女別,年齢層別,罪名別,就労状況別)
5-2-4-3図 保護観察終了者の取消・再処分率の推移(男女別,年齢層別,罪名別,就労状況別)
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仮釈放者(全部実刑者)を男女別に見ると,女性は,平成16年(6.5%)をピークに緩やかな低下傾向にあり,令和元年は3.3%であった。男性は,女性と比べ低下傾向が大きく,同年は,平成12年(8.4%)より4.1pt低い4.3%であった。年齢層別に見ると,21年以降は年齢層による差が余りなくなってきており,令和元年は,65歳以上の年齢層がそれ以外の年齢層よりも高かった(仮釈放者(一部執行猶予者)についても,同年の取消・再処分率は,65歳以上の年齢層(4.5%)がそれ以外の年齢層よりも高かった(CD-ROM参照)。)。また,罪名別に,窃盗,覚醒剤取締法違反及びその他の罪名で比較してみると,同年は,窃盗及び覚醒剤取締法違反の取消・再処分率がいずれもその他の罪名より高いものの,平成12年と比べると,窃盗は6.3pt,覚醒剤取締法違反は4.2pt,それぞれ低下している。保護観察終了時の就労状況別に見ると,保護観察終了時に無職であった者は,有職であった者と比べ,取消・再処分率が一貫して高いが,令和元年の保護観察終了時に無職であった者の取消・再処分率(9.8%)は,平成12年(20.3%)と比べて著しく低下している。

保護観察付全部執行猶予者では,男女別に見ると,平成12年は男性が39.6%,女性が28.5%であったところ,令和元年は女性(29.0%)が男性(27.5%)よりも高くなっている(保護観察付一部執行猶予者について見ると,同年は男性が53.8%,女性が48.6%であった(CD-ROM参照)。)。年齢層別に見ると,30歳未満の層の取消・再処分率が一貫して高く,平成12年は44.4%,令和元年は35.7%であった。罪名別に見ると,窃盗及び覚醒剤取締法違反がその他の罪名と比べ一貫して高く,同年では覚醒剤取締法違反は12.3pt,窃盗は15.3ptその他の罪名よりもそれぞれ高かった。保護観察終了時の就労状況別に見ると,保護観察終了時に無職であった者は,有職であった者と比べ,取消・再処分率が一貫して高い(保護観察付一部執行猶予者の取消・再処分率は,同年の保護観察終了時に無職であった者は68.3%,有職であった者は42.1%であった(CD-ROM参照)。)。

5-2-4-4表は,平成22年から令和元年に保護観察が開始された仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者について,保護観察が開始された年ごとに,保護観察が開始された日から5年以内に再犯又は遵守事項違反により仮釈放又は刑の執行猶予の言渡しを取り消された者の人員を見たものである(覚醒剤取締法違反については,7-4-3-14表参照)。平成29年から令和元年の各年に保護観察が開始された保護観察付全部・一部執行猶予者について,各年とも,保護観察付一部執行猶予者の方が保護観察付全部執行猶予者に比べて,元年末までに刑の執行猶予の言渡しを取り消された者の比率が高い。例えば,平成29年に保護観察が開始された保護観察付一部執行猶予者(248人)が令和元年末までに刑の一部執行猶予の言渡しを取り消された割合(23.8%)は,平成29年に保護観察が開始された保護観察付全部執行猶予者(2,595人)が令和元年末までに刑の全部執行猶予の言渡しを取り消された割合(17.9%)よりも5.9pt高い。

5-2-4-4表 仮釈放・保護観察付全部・一部執行猶予の取消状況
5-2-4-4表 仮釈放・保護観察付全部・一部執行猶予の取消状況
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