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令和2年版 犯罪白書 第2編/第5章/第6節/2

2 更生保護施設

更生保護施設は,主に保護観察所から委託を受けて,住居がなかったり,頼るべき人がいないなどの理由で直ちに自立することが難しい保護観察又は更生緊急保護の対象者を宿泊させ,食事を給与するほか,就職援助,生活指導等を行ってその円滑な社会復帰を支援している施設である。

令和2年4月1日現在,全国に103施設があり,更生保護法人により100施設が運営されているほか,社会福祉法人,特定非営利活動法人及び一般社団法人により,それぞれ1施設が運営されている。その内訳は,男性の施設88,女性の施設7及び男女施設8である。収容定員の総計は2,392人であり,男性が成人1,886人と少年321人,女性が成人134人と少年51人である(法務省保護局の資料による。)。

令和元年における更生保護施設への委託実人員は,7,966人(うち新たに委託を開始した人員6,269人)であった(保護統計年報による。)。更生保護施設へ新たに委託を開始した人員の推移(最近20年間)は,2-5-6-3図のとおりである。

2-5-6-3図 更生保護施設への収容委託開始人員の推移
2-5-6-3図 更生保護施設への収容委託開始人員の推移
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令和元年度における更生保護施設退所者(応急の救護等及び更生緊急保護並びに家庭裁判所からの補導委託のほか,任意保護(更生緊急保護の期間を過ぎた者に対する保護等,国からの委託によらず,被保護者の申出に基づき,更生保護事業を営む者が任意で保護すること)による者を含む。)の更生保護施設における在所期間別構成比は,2-5-6-4図のとおりである。88.1%の者が6月未満で退所している。平均在所日数は79.7日であった。退所先については,借家(32.6%),就業先(18.3%)の順であった。退所時の職業については,労務作業(46.1%),サービス業(8.3%)の順であり,無職は35.0%であった(法務省保護局の資料による。)。

2-5-6-4図 更生保護施設退所者の在所期間別構成比
2-5-6-4図 更生保護施設退所者の在所期間別構成比
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更生保護施設では,生活技能訓練(SST),酒害・薬害教育等を取り入れるなど,処遇の強化に努めており,令和元年度においては,SSTが37施設,酒害・薬害教育が45施設で実施されている(法務省保護局の資料による。)。

また,適当な帰住先がなく,かつ,高齢又は障害により福祉サービス等を受けることが必要であるが,出所後直ちに福祉による支援を受けることが困難な者について,一旦更生保護施設において受け入れ,福祉への移行準備及び社会生活に適応するための指導や助言を内容とする特別処遇が行われており,その役割を担うための施設(指定更生保護施設)が指定されている。令和元年度に特別処遇の対象となったのは1,885人(前年比34人(1.8%)増)で,2年4月1日現在,全国で74施設が指定更生保護施設に指定されている(法務省保護局の資料による。)。

このほか,薬物処遇に関する専門職員を配置して,薬物依存がある保護観察対象者等への依存からの回復に重点を置いた処遇を実施する施設(薬物処遇重点実施更生保護施設)として指定されている施設が,令和2年4月1日現在,全国で25施設ある(法務省保護局の資料による。第7編第5章第3節2項(2)ア(ア)参照)。

さらに,平成29年度からは,更生保護施設を退所するなどして地域に生活基盤を移した保護観察対象者及び更生緊急保護対象者に対し,更生保護施設に通所させて,自立更生に向けた生活上の諸課題を解決するための生活相談に乗り,必要な指導や助言を行ったり,継続的に薬物処遇を受けさせたりするフォローアップ事業を更生保護施設に委託する取組が開始されている。令和元年度にフォローアップ事業の対象となった人員は252人で,その内容は,生活相談支援が226人,薬物依存からの回復プログラムが25人,薬物依存回復訓練が1人であった(法務省保護局の資料による。同事業における薬物処遇については,第7編第5章第3節2項(2)ア(ウ)参照)。