前の項目 次の項目        目次 図表目次 年版選択

令和元年版 犯罪白書 第7編/第1章/第2節
第2節 平成の刑事政策

第1編で取り上げたとおり,平成期の刑事関連法の改正や立法は,多数回・多岐にわたっている。背景には,新しい事象・犯罪手口等に対応する必要や,近年における個別犯罪の実情に鑑み,事案の実態に即した対処をする必要が生じたことのほか,グローバル化に伴い,犯罪に対し国際的に取り組むための条約の国内法化が求められたことや,平成半ばの犯罪増加に対し厳正な姿勢で臨む必要が生じたことなどがある。

平成元年版犯罪白書においては,暴力団組員等による犯罪,少年非行,国際犯罪,過激派による爆弾事件やテロ事件,財産刑の在り方,暴力団関係者・累犯者・高齢者についての処遇,保護司の確保,監獄法や少年法の改正検討等が今後の課題として挙げられていたが,これらへの対処状況を見ると,暴力団犯罪・組織犯罪については,暴力団対策法や組織的犯罪処罰法が制定され,国際犯罪については,麻薬特例法や国際受刑者移送法の制定や,刑事共助条約・協定の締結がなされた。財産刑の在り方の見直しに関しては,罰金額等の引上げのための刑法等の一部改正がなされた。監獄法や犯罪者予防更生法・執行猶予者保護観察法は,それぞれ新法に改められた。少年法制では,平成13年4月に,少年事件の処分の在り方の見直し,審判での事実認定手続の一層の適正化,被害者等に対する配慮等を含む大幅な改正がなされ,その後も,少年院収容可能年齢の引下げ,被害者等に審判の傍聴を許すことができる制度の導入等の改正がなされている。

他方,平成元年版犯罪白書は,我が国の犯罪が少ない理由として,「遵法精神に富む国民性,経済的な発展,低失業率,教育の高水準,地域社会の非公式な統制の存在,島国である地理的条件,刑事司法運営に対する民間の協力,銃砲刀剣や薬物の厳重な取締り,高い検挙率で示される効果的な警察活動及び刑事司法機関の適正かつ効果的な機能等」を挙げているが,例えば平成14年版犯罪白書は,暴力的色彩の強い犯罪が増加している背景として,大衆社会の出現により大都市に生じた匿名性,相互の関心やモラルの低下が地方都市にも拡散するとともに,家庭・学校における教育機能が低下するなど,我が国の伝統的な犯罪抑止要因の機能が低下していること等を指摘しており,社会の変化が犯罪にも影響を及ぼしてきたことが認められる。

その意味で,刑事政策も社会の変化を映す鏡のような側面を有するところ,平成の時代における主要な刑事政策テーマとしては,以下のものが挙げられる(順番は本白書において取り上げた順による。)。