前の項目 次の項目        目次 図表目次 年版選択

令和元年版 犯罪白書 第7編/第1章/第1節/3
3 犯罪者・非行少年の処遇
(1)検察

平成期における検察庁新規受理人員は,総数では平成18年まで200万人を超えていたが,その後漸減し,30年には平成期で初めて100万人を下回りピーク時の半数以下となった。罪種別では,道交違反と過失運転致死傷等が大半を占めているところ,総数の減少は道交違反の減少によるところが大きく,実際,15年以降は道交違反の人員が過失運転致死傷等の人員を下回るに至っている。

平成期の検察庁終局処理人員についても新規受理人員と同様の傾向を示しているが,公判請求人員は,平成16年まで増加傾向,17年から減少傾向にある。起訴猶予人員も19年から減少しているが,それを上回る勢いで略式命令請求人員が減少していることから,起訴率は3割近くまで低下している。公判請求率はむしろ26年から上昇傾向にあり,27年以降8%を上回っている。

(2)裁判

裁判確定人員総数は,平成初期においては若干増加した年もあるものの,平成期全体としては減少傾向にあり,平成30年は元年の4分の1以下になっている。これは大半を占める罰金の人員が大きく減少していることによるところが大きく,有期懲役・禁錮の人員で見ると,16年まで増加傾向を示し,その後減少傾向にあるものの,30年もなお5万人を上回っており,平成初期の人員数とさほど大きな違いはない。有期懲役の全部執行猶予率も約6割前後と平成期を通じて大きな変化はない。死刑は16年から21年及び23年・24年に10人以上であったがそれ以外は毎年10人未満であり,無期懲役は15年から18年の間が100人以上であったがそれ以外は毎年100人未満であることから,平成中期以降に凶悪重大犯罪の判決が多く確定したことがうかがえる。28年に刑の一部執行猶予制度が始まったが,一部執行猶予は29年,30年と1,500人を上回った。平成期の無罪確定者は3年の197人が最も多く,それ以外は百数十人以下である。

平成21年には裁判員制度が開始されたところ,裁判員裁判対象事件の第一審における新規受理・終局処理人員は,同年の終局処理人員を除き1,000人台で推移してきたが,29年の終局処理人員は1,000人を割り込んだ。罪名別では強盗致傷と殺人が多く,その合計で総数の半分近くを占める。

(3)成人矯正

平成期における刑事施設の年末収容人員は,平成4年に4万5,082人まで減少した後増加し,18年に8万人を上回ったが,その後減少して,30年には約5万人となっている。

刑事施設の収容率(年末収容人員の収容定員に対する比率)は,被収容者全体の収容率が平成13年から18年まで100%を超えていたが,17年からは毎年低下している。

平成期の入所受刑者人員は,平成4年に2万864人まで減少した後,増加に転じ,18年には3万3,032人まで増加したが,その後再び減少し,28年以降,4年を下回り戦後最少を記録している。

年齢層別では,男女共に,平成15年時点では30歳代の構成比が最も高かったが,30年には40歳代の構成比が最も高くなっており,元年には315人しかいなかった65歳以上の者も30年には2,222人となるなど,入所者の高齢化が進んでいる。罪名別では,平成当初は覚せい剤取締法違反の構成比が最も高かったが,現在は窃盗の構成比が最も高い。

特別改善指導のうち薬物依存離脱指導の受講開始人員は増加傾向にあり,平成28年度以降,1万人前後となっている。

平成期の出所受刑者(仮釈放又は満期釈放等により刑事施設を出所した者に限る。)人員は,2~3年遅れで入所受刑者と同様の傾向を示し,満期釈放等と仮釈放の合計に対する満期釈放等の比率は,平成21年と22年に50%を超えたが,それ以外の年は40%台で推移している。なお,出所受刑者のうち,一部執行猶予受刑者は,29年は362人,30年は1,202人であった。

(4)更生保護

平成期において,仮釈放者人員は1万2,000人台から1万6,000人台で推移しており,仮釈放率は,平成21年と22年に50%を割り込んだが,それ以外の年は50%から60%の間で推移している。

平成期の保護観察開始人員については,仮釈放者が前記のとおり1万2,000人台から1万6,000人台で推移し,保護観察付全部・一部執行猶予者は平成初期は5,000人前後で推移していたものが平成12年に5,683人まで増加したが,その後減少傾向にあり,29年には3,000人を割り込んだ(30年は3,455人)。

全部執行猶予者の保護観察率(全部執行猶予付判決の言渡しを受けた人員に対しそのうち保護観察が付された人員の比率)は,平成初期に14%前後であったものが平成20年の8.3%になるまで低下傾向にあったが,21年に上昇に転じ,25年から27年まで10.0%で推移していたが,その後再び低下し30年には7.8%となっている。

専門的処遇プログラムによる処遇の開始人員の推移に目立つ変化はなかったが,薬物再乱用防止プログラムの受講開始人員が,一部執行猶予受刑者が出所し始めた平成29年以降急増している。

(5)非行少年の処遇

犯罪少年の検察庁新規受理人員総数は平成元年には約45万人であったのが15年には約25万人,30年には約6万人となっており,罪名別に見ると,15年・30年は元年に比べ道交違反の割合が低くなっている。

平成期の家庭裁判所新規受理人員も,ほぼ一貫して減少しており,平成30年は元年の約8分の1である。一般保護事件,道路交通保護事件のいずれも大きく減少したが,特に道路交通保護事件が著しく減少し,元年当初それほど変わらなかった両事件の人員が30年には一般保護事件が道路交通保護事件の3倍以上となっている。

平成期の少年鑑別所入所者の人員は,平成元年から7年まで減少傾向にあったが,8年以降増加に転じ,15年には2万3,063人になったが,その後は毎年減少を続け,30年には15年の3分の1以下にまで減少している。

平成期の少年院入院者の人員も,同様に平成7年まで減少傾向にあったものが8年以降増加し,12年に6,052人となったが,その後減少傾向に転じ,30年は12年の3分の1近くとなっている。年齢層別の人口比では,平成初期においては年長少年が最も高かったが,中間少年が年長少年を上回ることが多くなり,26年以降は再び年長少年が中間少年を上回っている。

保護観察処分少年の保護観察開始人員は,平成初期は7万人を上回っていたが,平成30年はその約5分の1以下となっており,そのうち交通短期保護観察の対象者の占める比率は,平成初期の7割近くから30年に3割近くにまで低下している。年齢層別に見ると,保護観察処分少年,少年院仮退院者いずれについても15歳以下の割合が最も低いのは変わらない。他方,30年は少年院仮退院者において20歳以上の割合が約4分の1を占める。