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平成30年版 犯罪白書 第2編/第5章/第1節/1

第1節 仮釈放と生活環境の調整
1 仮釈放

仮釈放は,「改悛の状」があり,改善更生が期待できる懲役又は禁錮の受刑者を刑期満了前に仮に釈放し,仮釈放の期間(残刑期間)が満了するまで保護観察に付することにより,再犯を防止し,その改善更生と円滑な社会復帰を促進することを目的とするものであり,その審理は地方更生保護委員会が行う。

仮釈放を許す基準となる「改悛の状」があると認められるためには,悔悟の情及び改善更生の意欲があり,再び犯罪をするおそれがなく,かつ,保護観察に付することが改善更生のために相当であると認められることが必要であるが,社会の感情がこれを是認すると認められないときは仮釈放は許されない。また,有期刑については刑期の3分の1,無期刑については10年の法定期間を経過している必要がある。

(1)仮釈放審理

仮釈放審理を開始した人員は,平成19年において1万8,128人であった後,20年から減少傾向にあり,29年は1万4,289人(前年比0.4%減)であった。このうち一部執行猶予者の人員は548人であった(CD-ROM資料2-7参照)。

平成29年に,仮釈放が許可された人員と許可されなかった人員(仮釈放の申出が取り下げられた者を除く。)の合計に占める後者の比率は,4.4%(前年比0.8pt上昇)であったところ,このうち一部執行猶予者について見ると,0.3%であった(CD-ROM資料2-7参照)。

(2)仮釈放者の人員

出所受刑者(仮釈放,一部執行猶予者の実刑部分刑期終了,又は満期釈放により刑事施設を出所した者に限る。)の人員及び仮釈放率の推移(昭和24年以降)は,2-5-1-1図のとおりである。平成29年の仮釈放者人員12,760人には一部執行猶予者で仮釈放となった283人が含まれており,また同年の満期釈放者等人員は,満期釈放者9,159人と一部執行猶予者で実刑部分刑期終了により出所した79人を合わせた9,238人である(CD-ROM参照)。

仮釈放率は,平成17年から6年連続で低下していたが,23年に上昇に転じ,29年は58.0%(前年比0.1pt上昇)であり,これを男女別に見ると,男性が56.4%(同0.1pt上昇),女性が72.9%(同0.01pt低下)であった(矯正統計年報による。なお,高齢者の仮釈放率については7-3-5-3図参照)。

2-5-1-1図 出所受刑者人員・仮釈放率の推移
2-5-1-1図 出所受刑者人員・仮釈放率の推移
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(3)刑の執行率

2-5-1-2図は,定期刑受刑者の仮釈放許可人員について,刑の執行率(執行すべき刑期に対する出所までの執行期間の比率)の区分別構成比の推移(昭和62年・平成9年・19年・25〜29年)を見るとともに,平成29年の同人員の刑の執行率を刑期別に見たものである。近年,刑の執行率が低い段階で仮釈放が許される者の構成比は,低下傾向にある。また,29年においては,刑期が1年を超える者では,刑期が長い者の方が,刑の執行率が低い段階で仮釈放が許される者の占める比率が低くなっている。

2-5-1-2図 定期刑の仮釈放許可人員の刑の執行率の区分別構成比の推移等
2-5-1-2図 定期刑の仮釈放許可人員の刑の執行率の区分別構成比の推移等
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(4)無期刑受刑者の仮釈放

2-5-1-3表は,無期刑の仮釈放許可人員の推移(最近10年間)を刑の執行期間別に見たものである。

2-5-1-3表 無期刑仮釈放許可人員の推移
2-5-1-3表 無期刑仮釈放許可人員の推移
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