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平成29年版 犯罪白書 第7編/第2章/第2節/コラム7

コラム7 善通寺市等との連携による社会貢献活動

晩春の香川県善通寺市は,新緑に包まれ,心が落ち着く雰囲気がある。JR善通寺駅から程近い通りの一角に善通寺市民会館があり,その一室に善通寺地区保護司会更生保護サポートセンターがある。そこで,善通寺地区保護司会の 保護司 大西寛 氏と 森口澄子 氏,そして善通寺市土木都市計画課の担当者から,同保護司会と同市等との連携による社会貢献活動の開拓についての経緯を伺った。

同保護司会は,善通寺市と多度津町の1市1町を擁する保護司会であり,かねてから両地方公共団体や地域の他の機関・団体との連携の下に,様々な更生保護活動を積極的に行ってきた。そのような協力関係の中で,平成26年8月,同市の全面的な支援を得て,更生保護サポートセンターが市民会館に開設された。

その頃,同保護司会では,高松保護観察所からの働き掛けに応じ,保護観察対象者の社会貢献活動を実施する場所を探しており,地方公共団体等にもその協力を求めていた。すぐに同市役所から連絡があり,同市土木都市計画課と同保護観察所の担当保護観察官との話合いが行われた。同市土木都市計画課の担当者は,社会貢献活動の実施場所の候補地を幾つか用意し,社会貢献活動の目的等を踏まえつつ,担当保護観察官に対しそれぞれの候補地についての情報を提供した。例えば,観光客が行き交う遊歩道は,多くの人の目にとまるが,元々ごみが少なく達成感はあまりないかもしれない。また,市が管理する道路側溝の清掃は,作業量は多いが,通りかかったり,声を掛けてくれたりする者は少なく,自己有用感の涵養にすぐにはつながらないかもしれない。こうした熱心な検討を踏まえ,JR金蔵寺駅前花壇における花の植え替え作業が,社会貢献活動の候補として浮上した。この作業は,6月頃及び11月頃の年2回,JR金蔵寺駅前の花壇において季節にふさわしい花に植え替えることを内容としている。ある程度の技術の習得が必要な作業であり,作業を通じた参加者相互の交流が予想され,また,行き交う通行人が比較的多い場所であるため,作業を通じて社会性と自己有用感を高めることが期待された。

早速,この社会貢献活動は実行に移され,平成26年11月に第1回目の活動が行われ,これまでに計3回の活動が実施されている。そのいずれにも,保護司や保護観察官だけでなく,善通寺市の職員も参加し,植え替え作業の方法を指導したり,一緒に作業に加わったりしている。活動後の保護観察対象者からの感想は,「周りの人が教えてくれたから,きれいにできた。」,「人と意見を交換するのが楽しかった。」,「公共施設が職員やボランティアの人のおかげできれいになっていることを知った。」など,この活動の効果について手応えを感じさせるものが多い。

しかし,花の植え替え作業には年2回しか実施できないという制約がある。そこで,同保護司会では,地方公共団体や地域の組織・団体の協力を得て,新たな社会貢献活動の開拓に乗り出し,その結果,地域の保育所,公園内の野外活動施設,特別養護老人ホーム,神社等における活動が可能になった。なかでも平成29年2月に実施された保育所における活動は,更生保護サポートセンターにおいて事前に遊具や雑巾などを作り,保育所に赴いてそれを贈呈するとともに,その遊具を使って幼児たちと遊ぶという,ユニークな内容の活動である。

このように善通寺市では,地方公共団体や地域の組織・団体の協力・支援を受け,社会的に有意義で,しかも処遇上の効果が期待できる社会貢献活動が着実に根付いている。

社会貢献活動によって植え替えられた花壇【写真提供:高松保護観察所】
社会貢献活動によって植え替えられた花壇
【写真提供:高松保護観察所】