前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

平成28年版 犯罪白書 第5編/第2章/第2節/コラム

コラム 法務省式ケースアセスメントツール(MJCA)を活用した関係機関の連携

法務省式ケースアセスメントツール(MJCA)(第3編第2章第3節3項(1)ア本節1項参照)は,少年鑑別所における鑑別の有効なツールとなっており,今後,少年院や保護観察所における少年の理解や処遇効果の検証のために一層活用されることが期待されている。ここでは,甲府少年鑑別所・甲府保護観察所の取組を中心に,MJCAを活用した関係機関との連携について紹介する。

少年鑑別所職員と保護観察官による事例検討会の風景【写真提供:甲府少年鑑別所】
少年鑑別所職員と保護観察官による事例検討会の風景
【写真提供:甲府少年鑑別所】

甲府少年鑑別所では,少年院・少年鑑別所と更生保護官署との連携強化の一環として,在所者が審判で保護観察決定を受けた場合,保護観察実施上の処遇指針を簡潔にまとめた「処遇指針票」を作成し,MJCAの結果と併せて,同決定直後に甲府保護観察所に送付している。甲府保護観察所では,これを保護観察の実施計画策定や,初回面接に備えた対象者の問題点の把握等に役立てている。少年鑑別所職員による保護観察官を対象としたMJCA講習会も行われており,保護観察官がMJCAをより深く理解した上で処遇にいかすための助けとなっている。

MJCAの結果(例)
MJCAの結果(例)

MJCAの結果は,再非行の可能性が4区分で示され,再非行防止に向けた教育の必要性が領域ごとにグラフで表示されるなど,視覚的にも分かりやすくなっており,対象者の再非行に関係する問題性の大きさや,どの領域に重点を置いて働き掛ければ再非行の可能性を低減できるのかを把握しやすい。保護観察決定後の初回面接では,限られた時間で対象者の特徴を把握し有効な働き掛けを行う必要があり,MJCAのこうした特徴がいかされる場面といえる。また,処遇指針票とMJCA結果の迅速な送付を通じて,保護観察開始当初から,少年鑑別所と保護観察所の担当者間で対象者の問題点に関する見立てや処遇方針が共有されることで,更なる連携が生み出される土台ともなっており,甲府少年鑑別所と甲府保護観察所においては,保護観察対象者に対する処遇鑑別(第3編第2章第3節3項(2)参照)や双方の担当者による事例検討会が積極的に行われている。

ところで,法務省矯正局では,MJCAの更に一歩進んだ活用法として,少年院入院後一定期間を経過した在院者にMJCAを再度実施し,少年院における処遇の効果や残された課題等を把握して,その後の処遇・教育方針の策定に活用することが検討されている。平成26年度には,少年鑑別所職員により,一部の在院者に対して,MJCAが実施された。この結果を踏まえ,少年院在院者に対するMJCAの活用の在り方について,引き続き検討が行われている。

これらの取組は,MJCAというツールを用いて,少年鑑別所における鑑別を共通の土台として,少年院・保護観察所の各処遇段階において,対象者が抱える課題等の変化を把握していくことを通して,少年保護手続を縦貫した再非行防止の働き掛けの実現を目指すものであり,その進展が期待される。