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平成28年版 犯罪白書 第2編/第6章/第5節/1

第5節 刑事司法分野における国際研修・法制度整備支援等
1 国連アジア極東犯罪防止研修所における協力

国連アジア極東犯罪防止研修所UNAFEI:United Nations Asia and Far East Institute for the Prevention of Crime and the Treatment of Offenders)は,日本国政府と国連の協定に基づき,昭和37年(1962年)に設置され,法務総合研究所国際連合研修協力部が運営している地域研修所であり,刑事司法分野における研修,研究及び調査を実施し,アジア太平洋地域を始めとする世界各国の刑事司法の健全な発展と相互協力の強化に努めている。

UNAFEIは,刑事司法分野における国連の優先事項及びその時々における国際社会の関心に沿ったテーマ等を選択して,毎年国際研修(2回)及び国際高官セミナー(1回)を実施している。近年では,社会内処遇における多機関連携,次世代を担う矯正・保護職員の育成,サイバー犯罪の現状と対策,迅速な裁判,特別な配慮を要する犯罪者のアセスメント及び処遇等を取り上げており,平成28年度(2016年度)の国際研修と国際高官セミナーは,「児童と刑事司法」を主要テーマとして開催する。また,汚職問題に特化した「汚職防止刑事司法支援研修」も毎年実施している。これらの研修の対象は,開発途上国の裁判官,検察官,刑務官,保護観察官,警察官等であり,我が国からも刑事司法関係者が参加している。研修では国内外専門家及びUNAFEIの教官による講義のほか,参加者による自国の制度等についての発表,グループ討議等を通じて相互理解の促進と経験の共有を図っている。

このほか,特定の国や地域を対象として,東南アジア諸国のための汚職対策に関する地域セミナー,ネパール及びベトナムとの司法制度比較共同研究,ベトナム法整備支援研修,仏語圏アフリカ刑事司法研修,ASEAN諸国を対象とした社会内処遇推進のためのセミナー等を実施している。また,平成27年(2015年)からミャンマー刑務所改革支援を開始し,平成28年度(2016年度)からはタイ法務省と共同でカンボジア,ラオス,ミャンマー及びベトナムに対する社会内処遇推進のための研修を開始するなどの新しい取組も行っている。

第18回汚職防止刑事司法支援研修【写真提供:国連アジア極東犯罪防止研修所】
第18回汚職防止刑事司法支援研修
【写真提供:国連アジア極東犯罪防止研修所】

昭和37年(1962年)9月の第1回国際研修以降,UNAFEIの研修に参加した刑事司法関係者は,平成28年(2016年)6月時点において,137の国と地域から,5,300人以上に上っている。これまでにUNAFEIの研修・セミナーに参加した刑事司法関係者の中には,その後それぞれの国において,最高裁判所長官,法務大臣,検事総長等の要職に就いた者が多数含まれており,我が国が刑事司法分野における国際協力を推進していく上で貴重なネットワークとなっている。

平成28年(2016年)6月23日現在における,研修参加人員の地域別構成比は,2-6-5-1図のとおりである。

2-6-5-1図 研修参加人員の地域別構成比
2-6-5-1図 研修参加人員の地域別構成比
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なお,UNAFEIを始めとする世界の諸地域において研修,研究等に携わる18の組織は,国連薬物犯罪事務所(UNODC。第1編第3章参照)を中心として,「国連犯罪防止刑事司法プログラム・ネットワーク機関」(PNI:Institutes of the UN Crime Prevention and Criminal Justice Programme Network)を構成し,情報共有,研究,研修などの国際社会に向けた支援を行っている。UNAFEIは,PNIの中で最も古くに設立された機関であり,PNIの一員として,日本政府代表団とは別に,コミッションに招へいされ,PNIの他機関との緊密な連携をとりながら,コミッションやコングレスにおいても審議議題等に関するワークショップを開催するなどして,コミッション及びコングレスの運営に寄与している。平成27年(2015年)の第13回コングレスにおいても,「女性犯罪者及び非行少年の処遇及び社会復帰」に関する公式ワークショップのうち,女性犯罪者の処遇及び改善更生に関するパネルの企画・運営を担当した。