前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

平成27年版 犯罪白書 第6編/第3章/第1節/2

2 少年院における性非行防止指導

少年院における性非行防止指導は,平成24年度に在院者指導用の標準プログラムを策定し,25年度から,2庁において,同プログラムを用いた「矯正教育プログラム(性非行)」として指導を開始した。その後,27年の少年院法(第3編第2章第1節3項(3)及び第4節2項参照)の施行により,矯正教育のうち,特定生活指導(性非行防止指導)として全国の少年院で実施されることとなった(同項(2)ア参照)。

(1)指導対象者の選定

性非行防止指導の対象者は,本件非行名が性非行(集団強姦,強盗強姦,強姦,強制わいせつ,公然わいせつ,わいせつ目的略取等)に該当する者,又は本件非行は性非行には該当しないが,性的な動機に基づき非行をじゃっ起し,当該非行の原因に認知の偏り又は自己統制力の不足が認められる者である。

指導対象者の選定は,対象者を収容する少年院の長が,在院者との面接結果や少年鑑別所の長の意見等を踏まえて行う。

(2)指導内容

性非行防止指導は,性に対する正しい知識を身に付けるとともに,自己の性非行に関する認識を深め,性非行をせずに適応的な生活をする方法を身に付けることを目的として,実施するものである。当該指導は性非行に関する自己理解を深め,自らの価値に基づく適応的な行動を活性化し,心理的柔軟性・共感性を向上させることを目的とした12単元から成るワークブック教材を用いた中核プログラムと,アンガーマネージメント(怒りの統制),被害者心情理解指導,性教育等の各種指導を組み合わせた周辺プログラムで構成されている。指導実施後は,出院までの期間に,中核プログラムの実施内容の復習や出院後の生活を見据えた対処方法を学ぶフォローアップ指導を受講させることとし,在院期間を通じた継続的指導に努めている。

(3)重点指導施設

指導対象者のうち,第1種少年院在院者(第3編第2章第4節2項(1)ア参照)であって,性非行防止指導を重点的かつ集中的に実施する必要性が高く,かつ保安上,医療上,保護調整上重点指導施設での指導実施に支障がなく,グループワークでの指導に適している者については,全国2庁の重点指導施設に移送して約4か月間の重点的かつ集中的な指導を実施し,当該指導終了後は,元の施設に再度移送してフォローアップ指導を行う。

移送して指導を行う場合には,指導対象者に重点指導施設における指導について説明し,当該指導への動機付けを図るとともに,その保護者に対しても理解と協力を求めるよう努めているほか,フォローアップ指導の効果的実施のため,重点指導施設と元の施設との間で情報を共有している。

(4)中核プログラムの実施方法

重点指導施設以外の施設における中核プログラムは,指導対象者の事情等に応じてグループワーク又は個別指導のいずれかを選択して実施している。

一方,重点指導施設における中核プログラムは10人程度のグループワークで行われるほか,実施に当たっては,指導全般において,認知行動療法等の技法に通じた外部専門家の協力を得るなどしている。

(5)効果検証

重点指導施設の長は,処遇効果の検証のため,中核プログラムの終了後に少年鑑別所の処遇鑑別(第3編第2章第3節3項参照)を実施するほか,必要に応じて指導開始時,指導期間中等の適宜の時期にも同鑑別を実施している。

(6)指導者の育成

標準化されたプログラムを全国統一的に同水準で実施するためには,指導者の育成が不可欠である。育成に当たっては,全国レベルで指導者を対象とした集合研修を実施するほか,各施設においても職員研修や研究授業等を実施したり,民間機関から専門家を招へいして助言を受けるなどして,指導者の知識や技能の向上に努めている。