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平成27年版 犯罪白書 第6編/第1章

第6編 性犯罪者の実態と再犯防止
第1章 はじめに

性犯罪は,被害者の人格や尊厳を著しく侵害する犯罪であり,国民が身近に不安を感じる犯罪として,社会的関心が高い。強姦の検挙件数は,平成21年以降1,000件前後で推移し,強制わいせつの検挙件数は,24年以降増加し続け,26年には強制わいせつが公然わいせつと区分されて統計を取り始めた昭和41年以降,最多となった。また,社会に対して強い不安感を与える13歳未満の年少者に対する強姦及び強制わいせつの被害者数も,平成22年以降1,100人前後で推移している。他方で,性犯罪は,被害者が被害を届け出ないことにより顕在化しない事案が多い犯罪とも言われている。

「再犯防止に向けた総合対策」においては,再犯防止のための重点施策として性犯罪者に対する施策を掲げ,性犯罪者に対しては,個々の再犯リスクを適切に把握し,刑務所等収容中から出所等後まで一貫性のある性犯罪者処遇プログラム等により,効果的な指導や支援を実施すること,特に,小児を対象とした性犯罪者,性犯罪又は性犯罪と密接な関連を有する他の犯罪を累行する者等,性犯罪リスクの高い刑務所出所者等に対して新たな再犯防止対策を検討することを要請している。

性犯罪に関しては,平成18年版犯罪白書で,動向分析のほか,性犯罪の受刑者と保護観察対象者を中心にその実態及び再犯状況等を分析し,22年版犯罪白書で,重大な犯罪の一つとして強姦を取り上げ,動向分析と出所受刑者を対象とした10年間の再犯状況等を分析した。それらを通して,性犯罪の受刑者の実態や再犯状況等についてある程度明らかにできたが,前記総合対策の要請を受け,性犯罪者の再犯防止対策の在り方の検討に資する資料を提供するために,性犯罪者の特性,前科や再犯の内容等について総合的に見ることで,性犯罪者の実態をより一層明らかにするとともに,再犯と関連のある要因を探索することが必要かつ有益であると考えられる。

そこで,本白書では,本編において,「性犯罪者の実態と再犯防止」と題し,性犯罪の動向,性犯罪者に対する再犯防止の取組の現状を紹介するとともに,性犯罪についての再犯防止対策の前提となる性犯罪者の実態把握に資する基礎資料を提供することとした。

本編の構成は次のとおりである。

まず,第2章において,警察,検察,裁判,矯正,更生保護の各段階における性犯罪の動向等を分析し,紹介する。

次に,第3章において,矯正及び更生保護の段階における性犯罪者の再犯防止のために実施されている各種取組を紹介するとともに,諸外国における地域社会での取組を紹介する。

続いて,第4章において,特別調査の調査結果の概要を紹介した上,平成18年版犯罪白書の性犯罪者の類型化に倣い,対象者を類型化し,それらの特性,前科や再犯の内容等を分析することによって,性犯罪者の多様な実態を明らかにするとともに,性犯罪再犯と関連する要因についても検討する。

最後に,第5章において,第2章から第4章までで明らかになった内容を概観した上で,性犯罪者による再犯を防止するための方策について検討する。