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平成27年版 犯罪白書 第2編/第6章/1

1 犯罪情勢の変化に即した刑罰法規の整備

犯罪に対する刑罰に関しては,様々な新規立法が行われているが,刑法においても,幾つかの重大な改正がなされており,有期刑の法定刑の上限の引上げや窃盗罪等への罰金刑の新設を始め,犯罪情勢の変化等に対応した刑罰法規の整備や法定刑等の見直し等が図られた上,平成22年4月,人を死亡させた犯罪について,公訴時効等の改正が行われた(平成22年法律第26号。同年10月25日全面施行)。また,23年6月,情報処理の高度化に伴う犯罪や悪質な強制執行妨害事犯に適切に対処するなどのため,刑法及び刑事訴訟法等が改正され(平成23年法律第74号),不正指令電磁的記録に関する罪の新設等の刑罰法規(23年7月14日施行)及び電磁的記録に関する記録命令付差押えの新設等の証拠収集手続規定の整備(24年6月22日施行),並びに強制執行妨害行為の処罰対象の拡充や法定刑の引上げ(23年7月14日施行)等がなされた(第1編第3章第2節2項及び第3節1項参照)。さらに,交通犯罪に対する刑罰に関しても,様々な新規立法が行われ,25年11月には,悪質かつ危険な自動車の運転により人を死傷させた者に対する新たな罰則を創設することなどを内容とする自動車運転死傷処罰法が制定され,26年5月20日から施行されている(第1編第3章第1節1項参照)。

平成25年6月には,刑の一部執行猶予制度を導入する刑法等の一部を改正する法律(平成25年法律第49号)及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律(平成25年法律第50号)が成立した。これらの法律によって導入された刑の一部執行猶予制度は,前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者や禁錮以上の刑の執行終了日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者等に対して,裁判所が,3年以下の懲役又は禁錮を言い渡す場合に,犯情の軽重及びその犯人の境遇その他の情状を考慮して,再び犯罪をすることを防ぐために必要であり,かつ,相当であると認められるときは,1年以上5年以下の期間,その刑の一部の執行を猶予することができる(その期間中,保護観察に付することもできる。)とするものである。ただし,薬物使用等の罪を犯した者に対しては,過去5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,薬物使用等の罪について言い渡された刑の一部の執行を猶予することができ,その猶予の期間中,必要的に保護観察に付される。なお,前記の刑法等の一部を改正する法律により,更生保護法が改正され,規制薬物等への依存がある者に対する保護観察の特則等が定められたほか,保護観察の特別遵守事項の類型に社会貢献活動が追加された(特別遵守事項の類型に社会貢献活動を追加する規定については,27年6月1日施行。本編第5章第2節参照)。