前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

平成26年版 犯罪白書 第2編/第7章/第5節/1

第5節 刑事司法分野における研修協力・法制度整備支援等
1 国連アジア極東犯罪防止研修所

国連アジア極東犯罪防止研修所UNAFEI:United Nations Asia and Far East Institute for the Prevention of Crime and the Treatment of Offenders)は,日本国政府と国連の協定に基づき,昭和37年(1962年)に設置され,以降,共同で運営されている国連の地域研修所であり,刑事司法分野における研修,研究及び調査の実施を通じて,アジア太平洋地域を始めとする各国の刑事司法の健全な発展と相互協力の強化に努めている。

UNAFEIの活動の中心は,開発途上国の刑事司法実務家に対する研修業務であり,毎年,3回の国際研修と1回の汚職防止刑事司法支援研修を行い,それぞれのテーマに即した内外の最新の知見を提供している。これらの研修には,複数国からの海外参加者に加え,我が国の裁判官,検察官,矯正職員,保護観察官等も研修員として参加しており,比較法的観点から,相互理解の促進と経験の共有が図られるように工夫されている。国際研修は,毎回研修テーマを選んで行っており,近年では,汚職防止対策,人身取引対策,被害者保護と修復的司法,証人の保護及び協力確保策,刑事事件における効果的な証拠収集及び立証,女性犯罪者の処遇,薬物犯罪者の処遇,実証的根拠に基づいた犯罪者の処遇,矯正・保護職員のストレスマネジメント等を取り上げている。

また,複数の参加国を対象とする新たな取組として,平成19年(2007年)以来,毎年,グッド・ガバナンス・セミナーを開催するなどしている。

平成25年に閣議決定された「「世界一安全な日本」創造戦略」においては,「近年急速に複雑化・深刻化している国際組織犯罪等に適切に対処するため,アジア等の開発途上国の刑事司法機関職員の能力向上を図るとともに,各国刑事司法機関と日本の刑事司法実務家との連携を推進する」とされており,UNAFEIが研修等を通じて果たすべき役割は,ますます重要なものとなっている。

UNAFEIは,平成24年(2012年)に創設50周年を迎えたが,これまでに,同所の研修・セミナーに参加した刑事司法関係者の中には,それぞれの国において,最高裁判所長官,法務大臣,検事総長その他の重要な地位に昇進した者が多数含まれている。UNAFEIのネットワークは,我が国が刑事司法分野における国際協力を推進していく上で大きな財産となっている。

さらに,UNAFEIは,国連の犯罪防止・刑事司法プログラムの一翼を担う立場から,毎年,犯罪防止刑事司法委員会に招へいされているほか,国連犯罪防止刑事司法会議の実施にも協力し,その第13回会議(平成27年(2015年)4月予定)の女性犯罪者及び非行少年の処遇及び社会復帰に関する公式ワークショップの企画運営に協力している。