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平成26年版 犯罪白書 はしがき

はしがき

我が国の犯罪情勢は,刑法犯の認知件数が,平成14年をピークに減少に転じているものの,戦後を通じて見れば依然として予断を許さない状況であり,また,近年では,初犯者や初入者が減少傾向にある中,検挙人員に占める再犯者や刑務所入所受刑者に占める再入者の比率は上昇傾向にある。このような情勢下で,平成24年に犯罪対策閣僚会議が決定した「再犯防止に向けた総合対策」では,対象者の特性に応じた指導及び支援の強化が重点施策に掲げられ,同施策に係る関係機関において,引き続き実効性のある再犯防止施策が推進されているところ,法務総合研究所においても,同総合対策を受け,再犯防止に関する各種研究を実施しているところである。

本白書では,平成25年を中心とした最近の犯罪動向と犯罪者処遇の実情を概観するのに併せ,同総合対策が掲げる対象者のうち,少年・若年者,高齢者及び女子の,それぞれの一般刑法犯の検挙人員が最も多い窃盗に着目し,「窃盗事犯者と再犯」を特集として取り上げた。

窃盗については,既に平成20年版犯罪白書で高齢犯罪者を取り上げ,その中で,高齢になって初めて窃盗に及ぶ者の数が増加していること,その手口のほとんどは万引きであることなどを明らかにし,平成21年版犯罪白書では再犯性が高いとされる犯罪の一つとして窃盗を取り上げ,初犯者・若年者に対する対策の重要性を明らかにしたが,その後も,犯罪が減少する中で,検挙人員に占める再犯者や再入者の割合が上昇していること,再犯者や再入者の中で窃盗が高い比率を占めていることなどから,改めて窃盗事犯者の実態や再犯の状況を分析し,その処遇について検討することは,再犯防止の観点からも重要である。本白書の特集においては,各種統計資料により窃盗の動向を分析するとともに,窃盗事犯者を対象にその犯罪の実態と一定期間経過後の再犯の状況等についての特別調査,矯正施設や保護観察所における窃盗事犯者の処遇の実態調査等に基づいて,窃盗事犯の現状及び窃盗事犯者の再犯の実態や要因等について分析し,今後の刑事政策上の課題を浮き彫りにし,窃盗事犯者に対する処遇の充実に向けた対策の手掛かりを探ったものである。

本白書が,窃盗事犯者に対する施策を検討する際の基礎資料として利用され,また今後の再犯防止施策を進めるに当たり,多少なりとも寄与することができれば幸いである。

終わりに,本白書作成に当たり,最高裁判所事務総局,内閣府,警察庁,総務省,外務省,財務省,文部科学省,厚生労働省,国土交通省その他の関係各機関から多大の御協力をいただいたことに対し,改めて謝意を表する次第である。


平成26年11月


法務総合研究所長 赤根智子