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平成25年版 犯罪白書 第6編/第4章/第2節/3

3 少年院の種類別・処遇区分別人員

6-4-2-3表は,平成24年における女子の少年院入院者の少年院の種類別・処遇区分別の人員を見たものである。女子の少年院入院者は,男子(3-2-4-8表CD-ROM参照)に比べ,総数に占める初等少年院及び医療少年院の人員の比率がそれぞれ高く(それぞれ3.7pt,5.7pt差),総数に占める中等少年院の人員の比率が7.6pt低い。最近20年間を見ても,一貫して,女子の少年院入院者は,男子に比べ,総数に占める初等少年院及び医療少年院の人員の比率がそれぞれ高く(初等少年院については,3.4pt〜11.3pt差。医療少年院については,4.1pt〜8.5pt差),中等少年院の人員の比率が低い(6.6pt〜16.7pt差。矯正統計年報による。)。


6-4-2-3表 女子の少年院入院者の人員(少年院の種類別・処遇区分別)
6-4-2-3表 女子の少年院入院者の人員(少年院の種類別・処遇区分別)
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女子の少年院入院者の特有の問題性に対応した新たな処遇に取り組んでいる,ある女子少年院の事例を紹介する。


コラム 少年院の取組

女子を対象としたC少年院は,「一人一人の少年に対する最善の矯正教育・社会復帰の実現」を運営方針の第一に掲げている。入院している少年は,窃盗,覚せい剤取締法違反又は傷害の非行による者が大半で,保護者又は交際相手との関係が非行の原因となっている者が多く,また,生育の過程で被害的で過酷な経験をしている者が相当数おり,総じて,自己肯定感が希薄で,自分自身の過去及び未来に対して否定的なイメージを持っている者が多いと認められる。

こうした負因に配慮し,生活指導においては,個別担任による面接を数多く実施して,集団処遇と組み合わせてきめ細やかな処遇を実施し,また,職業補導,教科教育,保健・体育,特別活動(書道,切り絵などの文化活動)等を組み合わせ,心身の健全な成長を促している。一方,保護者への働き掛け,帰住調整,就労支援といった,円滑な社会復帰のための指導,支援にも力を入れている。

また,C少年院では,平成24年度から,指導重点施設として,薬物非行に関する矯正教育プログラムを実施している。このプログラムは,薬物の再使用のリスクが高い少年に対して,3か月間の重点指導を行うものであり,その中心は,認知行動療法を基盤としたワークブック(学習帳)によるグループワークである。グループワークでは,過去の問題行動を振り返り,非行につながる考え方や行動,薬物使用の引き金(きっかけ)などを認識し,問題解決のための具体的方法を検討するなどしている。受講した少年たちには,グループメンバーからの経験に基づく指摘や意見を受け,自らの問題に真摯に目を向け,深く掘り下げて問題を認識する様子や,また,同じ悩みを持つ者という安心感から,グループ内で積極的な発言がなされ,互いに自己理解が進む様子が認められる。さらに,自らの怒りの感情を理解し,適切な言動で感情を表出する「アンガーマネージメント」,自己と他者の権利を共に尊重しながら,自分の思考や感情を適切に表現する「アサーション」,薬物問題を解決した成人による講話など,問題行動や背景要因への働き掛け及び出院後の生活構築のための指導を組み合わせ,薬物に依存しない生活を送るためのスキルを身に付けさせるための包括的プログラムを実施している。