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平成25年版 犯罪白書 第2編/第3章/第4節

第4節 裁判員制度

裁判員制度は,広く国民が刑事裁判の過程に参加し,裁判の内容に国民の健全な社会常識がより反映されるようになることによって,司法に対する国民の理解と支持が深まり,長期的に見て,司法がより強固な国民的基盤を得ることを目指し,裁判員法により創設され,平成21年5月21日から実施されている制度である。

裁判員裁判の対象事件は,死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に係る事件及び法定合議事件(死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪(強盗等を除く。))であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件である。ただし,被告人の言動等により,裁判員やその親族等に危害が加えられるなどのおそれがあって,そのために裁判員等が畏怖し裁判員の職務の遂行ができないなどと認められる場合には,裁判所の決定によって対象事件から除外される(平成24年において,同決定がなされた終局人員はなかった。最高裁判所事務総局の資料による。)。なお,対象事件に該当しない事件であっても,対象事件と併合された事件は,裁判員裁判により審理される。

平成21年から24年までの裁判員裁判対象事件(裁判員裁判の対象事件及びこれと併合された事件)の第一審の新規受理・終局処理(移送等を含む。以下この節において同じ。)人員を罪名別に見ると,2-3-4-1表のとおりである。24年の新規受理人員は,強盗致傷(329人)が最も多く,次いで,殺人(自殺関与及び同意殺人を除く。以下この節において同じ。313人),傷害致死(146人)の順であった。


2-3-4-1表 裁判員裁判対象事件 第一審の新規受理・終局処理人員(罪名別)
2-3-4-1表 裁判員裁判対象事件 第一審の新規受理・終局処理人員(罪名別)
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平成24年に第一審で終局判決に至った裁判員裁判対象事件について,開廷回数別構成比及び審理期間(新規受理から終局判決までの期間)別構成比を見ると,2-3-4-2図のとおりである。開廷回数は,大多数が5回以下であり,3回以下は36.3%を占め,平均は,4.5回であった。また,審理期間は,6月以内のものは33.7%であり,平均で9.3月であった。そのうち,公判前整理手続期日に付された事件(起訴後の罰条変更等により裁判員裁判対象事件となったため,公判前整理手続に付されなかったものを除く。)における公判前整理手続期日の回数は,3回以下が34.8%,4回以上6回以下が38.4%,7回以上が26.8%であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。


2-3-4-2図 裁判員裁判対象事件 開廷回数別・審理期間別構成比
2-3-4-2図 裁判員裁判対象事件 開廷回数別・審理期間別構成比
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2-3-4-3表は,平成24年に第一審で終局判決に至った裁判員裁判対象事件について,罪名ごとにその有罪・無罪の別及び有罪人員の科刑状況を見たものである。


2-3-4-3表 裁判員裁判対象事件 第一審における判決人員(罪名別・裁判内容別)
2-3-4-3表 裁判員裁判対象事件 第一審における判決人員(罪名別・裁判内容別)
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2-3-4-4図は,裁判員裁判の対象となる主な罪名について,第一審における有罪人員の科刑状況(平成21年から24年の累計)を,裁判員裁判による審理の有無(裁判員裁判・裁判官裁判)別に見たものである。


2-3-4-4図 裁判員裁判・裁判官裁判別の科刑状況別構成比(罪名別)
2-3-4-4図 裁判員裁判・裁判官裁判別の科刑状況別構成比(罪名別)
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平成24年において,裁判員裁判による終局判決に対する控訴事件の終局人員は504人であり,そのうち控訴棄却は422人と最も多かった。そのほか,控訴取下げが50人,破棄自判が23人(自判内容はいずれも有罪),公訴棄却5人,破棄差戻し・移送4人であった(司法統計年報による。)。

平成24年において,裁判員裁判による終局判決に対する上告事件の終局人員は230人であり,そのうち上告棄却は200人と最も多かった。そのほか,上告取下げが28人,破棄自判が1人(自判内容は無罪),破棄差戻し・移送1人であった(司法統計年報による。)。