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 昭和40年版 犯罪白書 第三編/第一章/一 

第三編 少年犯罪

第一章 少年犯罪の概況

一 犯罪を含めた非行の概念と非行少年の数

 少年犯罪処理に関する最も重要な法規の一つはいうまでもなく少年法(昭和二三年法律第一六八号)であるが,同法は,その対象となるべき「少年」を「二〇才に満たない者」と定めるとともに(第二条),同法が(犯罪を含めて)「非行のある少年」に適用される旨を明言している(第一条)。そこで,まず同法の規定によって,どのような非行少年が同法の適用を受けるかを明らかにする。
 まず,少年法は,一四才以上で二〇才未満の「罪を犯した少年」を対象とする(第三条第一項第一号。以下これに該当する少年のうちで,刑法犯を犯した者を「犯罪少年」といい,特別法令罰則に違反した者を「特別法犯少年」という。)。次に同法は,一四才未満の「刑罰法令に触れる行為をした少年」を対象とする(同条項第二号。以下「触法少年」という。)。最後に,同法は,一定の事由があって「その性格又は環境に照して,将来,罪を犯し,又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年」を対象とする(同条項第三号。以下「ぐ犯少年」という。)。しこうして,右の一定の事由とは,同法第三条第一項第三号の掲げるところによれば,「イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。ロ 正当な理由がなく家庭に寄りつかないこと。ハ 犯罪性のある人,もしくは不道徳な人と交際し,又はいかがわしい場所に出入りすること。ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること」の一または二以上に当ることをいう。
 少年法にいう非行少年の意義は,右に述べたとおりである。もし,少年法を離れた非行少年の定義を試みるならば,別の概念構成が可能であるかも知れないが,この編の説明は,少年法の定義に従って進めることにする。
 昭和三九年度の警察庁の「犯罪統計書」によると,刑法犯で検挙された犯罪少年は一九〇,四四二人,特別法犯で検挙された少年は八三四,四六一人,触法少年は五〇,六二〇人,ぐ犯少年等(ぐ犯少年およびぐ犯少年に類似の不良行為ある少年をいう。犯罪統計書にはぐ犯少年のみの数字は掲載されていない)は一,三二三,九八一人(大部分はぐ犯類似少年と考えられる)で,これらをあわせると二,三九九,五〇四人という数になる。しかし,これは警察で検挙または補導をうけた少年の数であって,このほかに,表ざたにならなかった「潜在非行」もかなりあると思われるから,非行少年は実際には二,三九九,五〇四人をはるかに上回るものと思われる。