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 昭和40年版 犯罪白書 第二編/第三章/二/1 

1 保護観察の対象

保護観察の対象となる者は,次の五種類である。
(1) 家庭裁判所の決定により,保護観察に付された者(以下「保護観察処分少年」という)
(2) 地方委員会の決定により,少年院からの仮退院を許された者(以下「少年院仮退院者」という)
(3) 地方委員会の決定により,仮出獄を許された者(以下「仮出獄者」という)
(4) 刑事裁判所の判決によって,刑の執行を猶予され,保護観察に付された者(以下「保護観察付執行猶予者」という)
(5) 地方委員会の決定により,婦人補導院からの仮退院を許された者(以下「婦人補導院仮退院者」という)
 このうち,(4)は,昭和二八年および同二九年の刑法ならびに犯罪者予防更生法の一部改正により,従来「一八才に満たないとき懲役又は禁こにつき刑の執行猶予の言渡を受け,猶予中の者」とあったものが,現行のとおりに改められたのであり,(5)は,売春防止法の施行により追加されたものである。
 保護観察は,地方裁判所所在地に設置されている四九の保護観察所が行なうのであるが,昭和二四年犯罪者予防更生法施行以後の保護観察所の新受人員について,その増減の推移を,(1)年度別,(2)大都市管轄保護観察所とその他の保護観察所の別,(3)罪名別によってみると,次のとおりである。
 まず,年度別にみると,保護観察所の新受人員の増減の状況は,II-3図のとおりであるが,この図において,昭和二四年から同三八年までの間に,二つの増加の頂点がみられる。第一の頂点は昭和二七年で,この年は,昭和二四年以降最高の人員を示した年である。以後は,その人員は減少傾向に転じているが,これは,保護観察処分少年,少年院仮退院者および仮出獄者の減少によるものである。その後,保護観察処分少年および少年院仮退院者が漸増し,さらに刑法の一部改正により,保護観察付執行猶予者が急増したことによって,人員は増加し,昭和三五年に第二の頂点を示している。しかし昭和三六年からは,少年の数が減少したため,再度減少傾向をたどり,現在にいたっている。

II-3図 保護観察新受人員累年比較(昭和24〜38年)

 次に,大都市を管轄する保護観察所とその他の保護観察所との別にみると,大都市管轄庁の新受人員が,最近漸次増加している。特に東京および大阪の新受人員の全新受人員中に占める割合は,II-89表に示すように,昭和三四年以降,累年増加の傾向にある。さらに,II-90表は,東京,横浜,大阪,神戸および名古屋の五庁における保護観察対象者の移動による人員の増加が,昭和三六年以降著しいことを示しており,この二つの表から,大都市における保護観察人員の増加がうかがわれる。

II-89表 大都市管轄保護観察所の保護観察新受状況(昭和29〜38年)

II-90表 大都市管轄保護観察所の保護観察対象者の移動に伴う人員の増加状況(昭和29〜38年)

 最後に罪名別にみると,新受人員中で暴力犯罪および暴力組織に関連する犯罪をしたものの占める割合がふえている。II-91表によると,恐かつ,傷害,強かんなどの暴力犯罪および麻薬,売春などの暴力組織に関連する犯罪の割合が増加していることがみられる。

II-91表 罪名別保護観察新受人員の率,累年比較(昭和31〜38年)