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平成24年版 犯罪白書 第7編/第2章/第3節/1

第3節 保護司と保護司活動
1 保護司
(1)保護司とは

保護司は,犯罪をした者や非行のある少年の立ち直りを地域で支える民間のボランティアであり,保護司法に基づき,法務大臣の委嘱を受け,民間人としての柔軟性と地域性を生かし,保護観察官と協働して保護観察や生活環境の調整を行うほか,地方公共団体と連携して犯罪予防活動等を行っている。身分は,非常勤の国家公務員であるが,給与は支給されない。

保護司の使命は,「社会奉仕の精神をもって,犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生を助けるとともに,犯罪の予防のため世論の啓発に努め,もって地域社会の浄化をはかり,個人及び公共の福祉に寄与すること」と定められており,<1>人格及び行動について,社会的信望を有すること,<2>職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること,<3>生活が安定していること,<4>健康で活動力を有することという条件を備えた者の中から,所定の手続(3項(1)参照)により委嘱がなされている。

保護司の職務は,「保護司は,保護観察官で十分でないところを補い,保護観察所等の所掌事務に従事するもの」と更生保護法で定められており,保護観察官との協働態勢のもと,更生保護全般に活動領域がわたっているところに特色がある。

保護司は,保護区(一つ又は複数の市区町村からなる区域。第2編第5章第5節1項参照)単位で保護司会を組織して犯罪予防活動や研修等を実施している(2項(1)イ参照)。なお,保護司会は,都道府県ごとに保護司会連合会を組織し(北海道においては四つ),さらに,八つの地方ブロック組織及び全国組織を結成している。

(2)保護司のプロフィール(年齢,性別及び職業)

ア 年齢

平成24年1月1日現在,保護司の人員は,4万8,221人で,その平均年齢は64.1歳である(第2編第5章第5節1項参照)。7-2-3-1図は,昭和28年から平成24年までの,保護司の年齢層別構成比の推移を見たものである。50歳代以下の者は,昭和28年には74.3%を占めていたが,その割合は年々低下し,平成24年は22.2%であった。一方,60歳代の者が占める割合は,昭和28年に22.4%であったのに対し,平成22年以降は50%を超えている。70歳以上の者が占める割合についても,昭和28年の3.3%から上昇傾向が続いており,平成24年には25.0%であって,総じて,近年において,保護司の高齢化が進行していることが分かる。なお,11年4月には,保護観察対象者と保護司との世代ギャップを縮小することなどを目的とし,保護司の再任上限年齢を76歳未満とするいわゆる定年制が導入され,70歳以上の者が占める割合が横ばいとなったものの,40〜50歳代の壮年層の割合の拡大には至っていない。


7-2-3-1図 保護司の年齢層別構成比の推移
7-2-3-1図 保護司の年齢層別構成比の推移

イ 性別・職業

保護司のうち,女性の比率は,昭和28年には7.2%であったが,その後上昇を続け,平成21年に25.8%に達し,以後横ばいで,24年は25.9%(1万2,485人)であった(2-5-5-1図参照)。

7-2-3-2図は,保護司の職業別構成比の推移を見たものである。平成24年1月1日において,無職(主婦を含む。)の割合が最も高く,次いで会社員等となっている。昭和28年からの変化の特徴を見ると,農林漁業及び宗教家の割合が低下し,その他の職業及び無職(主婦を含む。)の割合が上昇しており,就業構造の変化,女性保護司の増加,定年退職後の保護司就任の増加といった事情を反映していると思われる。一方,農林漁業,宗教家及び無職(主婦を含む。)以外の者を見ると,総数に占める割合は,昭和28年から平成2年にかけて45%前後で推移していたが,その後緩やかな上昇傾向にあり,24年に54.1%となっており,実人員についても増加傾向にあり(2年は2万1,892人,24年は2万6,078人),保護司の職業の幅が広がっていることがうかがえる。


7-2-3-2図 保護司の職業別構成比の推移
7-2-3-2図 保護司の職業別構成比の推移

(3)保護司の充足率と事件負担

保護司の定数は,全国で5万2,500人を超えないものと定められており(第2編第5章第5節1項参照),さらに,保護観察所単位及び保護区単位で,それぞれ定められている(3項(1)参照)。

全国を単位とする保護司の充足率(保護司の定数に対する保護司の人員の比率をいう。以下この節において同じ。)は,平成2年から22年にかけてはおおむね93%であったものの,23年に92.7%,24年に91.8%と,低下傾向にある。

7-2-3-3図は,平成13年及び23年の保護観察所単位の保護司の充足率と平均取扱人員(保護観察事件及び生活環境調整事件の年間取扱人員を,当該年1月1日時点の保護司の人員で除した数。以下この項において同じ。)を図示したものである。保護観察所別の保護司の充足率を見ると,全国単位の充足率が低下する中,充足率93%未満である保護観察所の数はむしろ減っていることから,北海道,首都圏の一部,近畿地方の一部,九州地方の一部等,充足率が他に比べて低い地域においては,保護司の確保がより深刻な状況にあることがうかがわれる。保護司の平均取扱人員については,保護観察開始人員の減少(2-5-2-1図及び3-2-5-1図参照)により,全体的には減少しているものの,いわゆる大都市圏を中心に,全体の3割程度の保護観察所においては,平均取扱人員が4.0以上であり,さらに,平均取扱人員が6.0以上の保護観察所が5庁あるが,これら平均取扱人員の多い保護観察所は,保護司の充足率が低い地域にあるものが多く含まれている。


7-2-3-3図 保護司の充足率・平均取扱人員(保護観察所別)
7-2-3-3図 保護司の充足率・平均取扱人員(保護観察所別)